約束したことができないときの言い訳は、明言と呼ばれるものもあれば、これは無理だろうというものもあり、東京で仕事をしていたときに言い訳集を書籍にしたことがあります。その中でも多かったのが作家の締め切りを伸ばすための言い訳で、これについては作家団体の理事を務めていたので伸ばす側の言い訳は、いくらでも知っていました。
その逆で、少しでも早く原稿を書いてもらう編集の立場で、どんな言い訳をされても伸ばさせないということも経験してきました。こちらは主には健康に関わる部分であったので、書き手が健康を害してまで早くとは言えなかったのですが、それ以外なら何を言われても“初耳”ではないという状態でした。
それなのに“初耳”で、聞き間違いではないのかと“二度見”ならぬ“二度聞き”したことがあります。これはテレビ番組の制作での経験でした。番組の根幹になるタイアップの取材をギリギリまで待っていたのに、連絡をしてもつながらず、出向いていそうなところに連絡をして、やっと捕まえたときのことでした。
間に合うのかと聞いたところ返ってきたのが「嘘つきになりたくないからやらない」という言葉でした。「嘘つきになりたくないから」というフレーズに続くのは「やる」とが「頑張る」、「間に合わせる」という言葉しか知らなかったので、「やらない」という言葉が出てきたときには一瞬、声が出なくなってしまいました。
結局は間に合わないので責められないように逃げていたということですが、このフレーズは一時期、テレビ業界で流行ほどではないものの、よく聞くようになっていました。
そのときには、緊急事態のために仕込んでいたネタがあったのでトラブル回避はできたのですが、私が大切に付き合ってきた薬学博士に無理を言って、生放送に登場してもらうことになり、そのときの義理を返すのに何年もかかったことを今でも苦しく思っています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕