ご飯を食べて増える脂肪の量は?

血糖値が上昇すると肝臓での脂肪合成が盛んになるという話を再三してきましたが、「どれくらい増えるのですか」という質問が雑誌記者からありました。どれくらい増えるのかというのは、ご飯100gを食べると脂肪が10g増えるのか20g増えるのかということを聞いてきているわけですが、脂肪酸の合成量は遺伝子でも異なり、血糖値の上昇度合いでも異なるので、かなりの個人差があります。しかし、多くの人の例から計算式が出されていて、ご飯は茶碗1杯160gを食べた場合には、その中に含まれている糖質は60gほどとなります。この60gの糖質のうち肝臓で合成される中性脂肪は17gとなります。
ご飯160gに対して17gの中性脂肪というと少ないように思えるかもしれませんが、エネルギー量で比較してみると、糖質は1gあたり約4kcalなので60gでは240kcalです。ご飯に含まれるたんぱく質は4gで1gあたり約4kcalなので16kcalとなります。脂質は0.5gで1gあたり約9kcalなので4.5kcalとなります。エネルギーとなるのは糖質、脂質、たんぱく質だけなので、これを加えると260.5kcalとなります。
17gの中性脂肪のエネルギー量は153kcalとなり、58.7%ものエネルギー量が中性脂肪として脂肪細胞の中に蓄積されることになります。糖質を肝臓で変化させて、わざわざ中性脂肪としているのは、エネルギー量が高いものとして蓄積させるための仕組みです。エネルギー量が高めれば、それだけ少しの容量で済むことになります。
ブドウ糖は1分子でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を38分子作り出すことができます。これは無酸素状態で2分子、ミトコンドリアのTCA回路で36分子の発生を加えたものです。これに対して脂肪酸は1分子で129分子のATPを作り出すことができます。エネルギー量で比較すると糖質と脂質は2.25倍の差ですが、ATPの数で比較すると3倍以上の差になります。
こういった計算は、ご飯だけを食べたときの話で、ご飯と中性脂肪が多く含まれる肉類、揚げ物を食べると、さらに蓄積されるエネルギー量が増えます。脂肪細胞の中に蓄積される中性脂肪は、食事で摂った脂肪と似たような形であるので脂肪合成されるときに使われるエネルギーロス率は3%ほどで済みます。それに対して糖質とたんぱく質が脂肪合成されるときには異なる形に変化することから20〜23%ものエネルギーロス率となります。
これだけの差があるので、糖質を多く食べると、中性脂肪が多く作られて、太っていくようになるわけです。これはダイエットで考えると困った仕組みと見えるかもしれませんが、生命維持のために重要となる中性脂肪の蓄積ということで考えると、これほど重要なメカニズムはありません。人間の身体は食糧危機に対応できるようになっているので、それに逆らってダイエットすることは、そう簡単なことではないということがわかります。