そこが知りたい27 塩分は血圧を上げるのか

塩分が多く含まれる食事は、高血圧の原因であるから避けるべきだと言われることがあります。健康診断で高血圧を指摘されると、減塩が指導され、それができないなら降圧剤を飲むことがすすめられることも多くなっています。

厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和元年)では、高血圧と指摘される収縮期(最高)血圧が140mmHg以上の割合は男性で29.9%、女性で24.9%にもなっています。

同じ調査で食塩の摂取量の平均を見ると、男性は10.9g、女性は9.3gで10年間の推移では減少傾向にあります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の塩分摂取目標量(食塩相当量)は1日あたり男性が7.5g未満、女性が6.5g未満と設定されています。高血圧や慢性腎臓病がある人の場合は、重症化予防のために男女ともに6.0g未満とすることがすすめられています。

国立循環器病研究センターは「かるしおプロジェクト」という塩を軽くふって美味しさを引き出す減塩運動を進めています。減塩食品には、かるしお認定を実施して、少しでも塩分を減らすことを推奨しています。

それだけに、塩分はいけないもの、減らすことは健康づくりの基本という認識が広まっているのですが、それは本当のことなのかという疑問も同時に高まってきました。塩分を摂取しないと、かえって血圧は上昇すると主張する医師もいます。

厚生労働省は2004年までは食塩の摂取目標は1日あたり10.0gとしていたので、随分と摂取量が少なくなったわけですが、その間に高血圧症患者数は約610万人から約1011万人と約66%も増えているという報告があります。

国民健康・栄養調査(令和元年)によると、高血圧症患者は60〜69歳では56.8%、70歳以上では68.6%になっています。年齢を重ねると血管が硬くなり、弾力性が低下する動脈硬化が進んでいくので、加齢は高血圧の大きな要因といえます。

しかし、血圧が上昇する原因は11種類あるとされ、塩分(ナトリウム)によって血圧が上昇する食塩感受性高血圧は40%ほどとされています。食塩感受性がない人は食塩を多く摂っても血圧が上昇しない一方で、血圧が高い場合には減塩しても血圧が下がらないという特徴があります。

ナトリウムによって血圧が上昇するのは、ナトリウムが水分を吸着することによって血液中の水分が増えて圧力が高まることが一般的に言われる理由です。

血液中のナトリウムが増えると、血管の細胞にナトリウムが多く取り込まれるようになり、細胞内の水分が増えて水膨れ状態になります。そのために血管が狭くなり、これもナトリウムによって血圧が上昇するメカニズムとなっています。

食塩感受性が低い人であっても、年齢を重ねていくと血管の老化が進んで、ナトリウムによる影響を受けやすくなるので、若いときと同じように安心して塩分を摂ってよい、というわけにはいかなくなるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕