牛乳は健康のためによいのか、それとも悪いものなのかという議論は、これまでにも何度もされてきました。健康によいという理由は、あまり変わりがなくて、良質なたんぱく質であること、カルシウムが豊富に含まれること、高いエネルギー源であること(コップ1杯で100kcal)があげられます。
これに対して健康によくないと理由は、時々によって変化していますが、よくあげられるのは「子牛が飲むもので人間が飲むものではない」ということです。牛乳は母牛から子牛に与えるものであるのは事実ではあるものの、だからといって人間が飲んで健康効果が得られないというわけではありません。
また、牛乳を多く飲んでいるアメリカ人のほうが骨粗鬆症になる人が日本人よりも多いということを理由としてあげている人もいます。それは事実ではあるものの、骨密度を高めるためのカルシウム源、たんぱく源は牛乳だけではありません。
骨密度を低下させる栄養素もあって、中でもリンはカルシウムと結びつくとリン酸カルシウムとなって排泄されるようになります。
それでも健康にはよくないと発言する例は多くて、有力な説になっていることとして、「日本人は乳糖分解酵素が少ない」ということがあります。乳幼児では乳糖分解酵素が多いものの、年齢を重ねていくと減っていくのが日本人の特性です。これは歴史的に乳製品を多く摂ってこなかったことが関係しています。
変性たんぱく質の問題もあります。これは殺菌のときの加熱によって起こることです。世界的に主流となっている低温殺菌牛乳は60℃で30分加熱するので、たんぱく質の変性は起こりにくくなっています。
それに対して日本で主流となっている超高温殺菌は、生乳を120〜150℃で2〜3秒間加熱殺菌します。たんぱく質は60℃を超えると変性するので、体内で分解されにくい性質になります。
牛乳アレルギーは、たんぱく質によって起こるとされています。体内に存在するたんぱく質か、歴史的に摂ってきたたんぱく質を免疫システムは味方と判別しますが、未知のたんぱく質が入ってくると病原菌や有害物質と判断して、これは排除しようとします。
食物アレルギーの多くは、未知のたんぱく質が入ってきたか、通常のたんぱく質であってもセンサーが乱れるか過剰に反応することによって起こると考えられています。牛乳アレルギーは、超高温殺菌が原因かもしれません。実際に、低温殺菌牛乳に変えたことで改善された例は数多くあるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕