なぜ油はおいしく感じるのか

ダイエットの大敵とされる甘いものと脂肪は、なぜ敵視されるのかというと、おいしくて食べすぎるからです。空腹のときには同じ甘いものであっても特においしく感じますが、これは甘いものに含まれているブドウ糖のせいです。ブドウ糖には脳の満腹中枢を刺激して、満腹を感じさせて食欲を抑える働きがあり、すぐにエネルギーとして使われる大切なエネルギー源なので、おいしく感じて食べさせるようになっているわけです。エネルギー量で言えば、甘いものを構成する糖質は1g当たり約4kcalで、たんぱく質とほぼ同じエネルギー量となっています。
エネルギー量だけでいえば糖質もたんぱく質も同じであっても、たんぱく質はエネルギーになるまでに時間がかかり、むしろ身体を構成するための重要な成分です。エネルギーになりやすいものを積極的に摂るというメカニズムの一つが、おいしく感じる感覚ということになります。
脂肪は、そのものの油を飲んでも食べても、おいしいという感じではありません。脂肪が多く含まれる肉と魚は重要なたんぱく源ですが、脂肪が多いほどおいしく感じるという特徴があります。これはサシ(まばらに点在している脂肪)の入った牛肉やマグロのトロを思い浮かべるとわかることです。脂肪のエネルギー量は1g当たり約9kcalと、糖質とたんぱく質の2倍以上のエネルギー量があります。より多くのエネルギーを蓄積するには脂肪が多く含まれる食品を食べたほうがよいので、脂肪がおいしく感じるようになったわけですが、たんぱく質と一緒でなくても、糖質と一緒であっても脂肪が多く含まれているとおいしく感じます。そこで菓子類にも脂肪が加えられます。植物素材と一緒でもおいしいので加工食品をおいしく感じさせて販売を促進するために脂肪がこっそりと加えられることにもなります。
肉や魚の切り身には“注射を打つ”という方法も使われます。普通は肉に脂肪を多く入れるためには品種改良と飼料の工夫が必要になりますが、脂肪を注入する針を刺して、好みの量のサシを入れることができます。これは生の肉として売る場合には精肉ではなく加工肉となるので見抜くことができます。ところが、外食店やマーケットなどで調理品とされたら表示義務はないので加工を知らないまま、おいしい肉、やわらかい肉として食べることになります。
魚の場合には注射を打つことはありません。魚の養殖でエサに脂肪を多く使うことで脂の乗った魚にすることができます。これはエサの工夫であるので問題はなくても、外食店で植物油を染み込ませたりする方法が使われると、これも見抜くことはできません。ただ、脂肪を入れるだけでなく、その脂肪の中にアミノ酸などの旨みを感じさせる調味料を加えているところもあります。
こうなると、本当に素材としておいしいのか、味付けでおいしくしたのか、さっぱりわからなくなります。素材がおいしい肉や魚で太ってしまったら、これは諦めることができたとしても、おいしくするために手が加えられたために脂肪の摂りすぎになったとしたら後悔が残ってしまいます。