ゆで卵ダイエットはやせるのか、やつれるのか

ゆで卵ダイエットは“今は昔の話”と思っていたら、「完全栄養食なので卵だけ食べれば大丈夫」「卵だけでやせられる」と言ってダイエット指導をしている人がいて、「そんなに古すぎる情報を信じて実践する人なんているのか」と思っていたら、信者はかなりの数いると聞いて驚いたものです。その指導している方は卵(鶏卵)を売っているわけではなくて、ダイエットのためのエクササイズの指導をしていて、“正しいダイエットには良質なたんぱく質が必要”と聞いていたので、卵をすすめるようになったとのことです。
エクササイズが効いているのか、卵が影響しているのか、よくわからないとしても、“信者を作ることが儲かる秘訣”ということのようです。なにしろ「信者」の2つの文字をくっつけると「儲」という文字になるのですから。
卵が完全食と言われるようになったのは、私たちの身体を構成するたんぱく質を作るのに必要なアミノ酸がバランスよく含まれているからです。アミノ酸のバランスがよくて良質なたんぱく質が作られたとしても、糖質と脂質もバランスよく摂れるわけではありません。完全なのはアミノ酸だけということです。ビタミンではビタミンA、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸、ビオチン、葉酸は多いのですが、ビタミンB₁、ビタミンC、ビタミンKは不足しています。ミネラルではカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、リン、セレンは多いのですが、それ以外のミネラルも卵を食べれば充分に摂れるわけではありません。また、食物繊維も少なくて、これだけ食べていれば大丈夫などとは、とてもじゃないが言えない内容です。
それでも卵だけを食べていると体重が減って、体脂肪も減っていきます。その結果だけを見たら、「卵はダイエットに効果がある」と見えてしまうかもしれませんが、そんなことがないのは冷静に考えればわかることです。卵は大きさにもよりますが、平均的には1個が100kcalほどです。1日に2000kcalが必要な人は20個を食べなければならないことになります。これだけの数を食べ続けるのは、さすがに辛いことです。それよりも少ない量だと必要なエネルギー量が足りないので、やせていくのは当然のことです。
こうなると、やせるというよりも、やつれるという状態になります。余分に身体についた体脂肪を減らしていくには、脂肪を燃焼させるためのビタミンB群が必要になります。個別にあげると、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸で、これらは卵には比較的多く含まれるので、通常の食事をしている人が追加で摂る分には効果的な食品だと言うことができるのですが、穀類、豆類、野菜類、肉類(中でもレバー)、魚類を摂ることで充分に補うことができるので、これを見ても完全栄養食とは言えないことがわかります。
「卵にはコレステロールが多いのでよくない」という意見には賛同することができないところですが、卵だけのダイエットではなく、卵をプラスしたダイエットを採用すべきだということはダイエット講習で話しています。ただし、自然な状態の卵を食べることを前提とした話です。