医薬品は一定の目的のために開発されるものであって、他の目的で使うものではないというのが原則です。中にはバイアグラのような例外もあり、元々は心臓病治療のために開発されたのに、治験段階で皆さんが知っているような強壮効果があることがわかり、そちらのための医薬品となりました。そもそもの開発目的と違ったといっても、バイアグラを、さらに別の目的で使用するということではありません。ところが解熱鎮痛剤のアスピリンは今でも、その治療の薬でありながら、抗血小板作用があることから、血栓ができないようにして動脈硬化を予防するために積極的に使われています。
血小板は血管に傷ができたときに、それを塞いで出血しないようにしてくれるものですが、血小板が集まりすぎると大きな瘡蓋(かさぶた)のようになり、これが剥がれたときに血液と中性脂肪が集まって血栓を作り出します。
アスピリンを使うと血小板の集まりが少なくなって、血栓が作られにくくなるということですが、そのために副作用として出血があげられています。この副作用を強くしてしまうものとして健康食品に使われる素材のイチョウ葉エキスがあります。イチョウ葉エキスは血液をサラサラ状態にして血流を促進する作用があり、ドイツをはじめとして医薬品として使用されている国もあります。医薬品と医薬品が組み合わされて使われると副作用が起こりやすくなることが知られていますが、それと同じことがアスピリンとイチョウ葉エキスでは起こります。
その理由ですが、イチョウ葉エキスには血小板を剥がす作用があって、これにアスピリンの働きが加わると血小板が剥がれすぎて出血をしてしまいます。出血といっても身体の中の血管で起こっていることなので刃物で傷つけたときのように大出血が起こるわけではありません。内出血のような状態になるのですが、目で確認されるものは皮膚に近いところで起こっているもので、身体の奥での出血は気がつかないままに進行することになります。
こういったことだけに、イチョウ葉エキスを愛用している人はアスピリンを使わないようにしたい、と考えたとしても、医師の処方を変更してくれとは言いにくいこともあり、救急搬送された場合には医薬品を選ぶことなどは不可能です。イチョウ葉をやめることをすすめているわけではなく、自分の摂っている健康食品と相性の悪い医薬品のことくらいは知っておいてほしいということです。