エネルギー代謝で活性酸素が発生する

全身の細胞は約60兆個とされていますが、細胞に取り込まれた酸素の一部は細胞内にある小器官のミトコンドリアの中で、エネルギーを作り出すために使われます。ミトコンドリアでは酸素とともに、エネルギー源となるブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸を取り込んでエネルギー産生(エネルギーを作り出すこと)が行われます。
ミトコンドリア内にはエネルギー産生を行うTCA回路というエネルギーを作り出す機関が備わっています。TCA回路(TriCarboxylic Acid cycle)は細胞のミトコンドリア内で行われている環状の代謝経路(代謝サイクル)で、TCA回路での変化はクエン酸から始まることからクエン酸回路とも呼ばれます。
TCA回路を経由しなくても無酸素状態によってエネルギー産生は行われますが、その場合にはブドウ糖や脂肪酸が1分子について2分子のエネルギー物質のATP(Adenosine Tri Phosphate:アデノシン三リン酸)が作り出されています。それに対して、TCA回路を経由して酸素が使われることによって36分子のATPが作り出されます。酸素はエネルギーを多く作り出すために欠かせないものであることがわかります。
ATPはアデニンという化合物にd‐リボースという糖が結合したもので、アデノシンに3分子のリン酸がつながったものがATPとなります。リン酸の結合部位にエネルギーが保持され、ATP分解酵素によってリン酸が切り離されるときにエネルギーが発生します。ATPから1分子のリン酸が切り離されてADP(アデノシン二リン酸)になるときに、約10kcalのエネルギーが発生します。
酸素には、触れた物質を酸化させる作用があります。例えば、鉄が酸化するとサビが生じて、だんだんとボロボロの状態になっていきますが、それと同じように酸素が多く発生すると人間も細胞がサビついたようになり、細胞の機能が低下していくようになります。
酸素の摂取量が一定の量のときには酸化は進みにくいものの、呼吸によって取り込まれる酸素が多くなりすぎて、濃い状態になると酸化が進みやすくなります。未熟児を保育するために使われる新生児保育器は高濃度の酸素が使われていますが、酸素濃度が高くなりすぎると乳幼児の眼の酸化が進み、網膜症になることが知られています。