臨床栄養の世界に関わり、日本臨床栄養協会の機関誌「New Diet Therapy」の編集をしていたときに、当たり前のように飛び交っていたのが「エネルギーコントロール」という言葉でした。摂取エネルギーが多くなりすぎることによって発症して、治療にも影響する生活習慣病の高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)はエネルギーコントロールの対象であり、そのための食事療法はエネルギーコントロール食と呼ばれていました。
これは摂取するエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)の量を調整する方法で、食べすぎの人は適正な分量に減らすことであって、これはダイエットの食事制限と同じ考えです。
ダイエットを成功させるためには、摂取エネルギーを減らすと同時に、エネルギー代謝を高めるための栄養素も重要になります。エネルギー源は細胞のミトコンドリアに取り込まれてエネルギー化されるのですが、そのときには水溶性ビタミンのビタミンB群を使って、アセチルCoAという化合物に変化させています。このアセチルCoAがミトコンドリアのTCA回路でクエン酸から次々と別の酸に変化して、エネルギー物質にATP(アデノシン三リン酸)を発生させています。
これが「エネルギー代謝」ですが、細胞の中で行われる重要な代謝の前半部分でしかありません。代謝はエネルギー源からエネルギーを発生させる異化と、作り出されたエネルギーを使って身体に必要な成分を作り出し、活動に必要なホルモンや神経伝達物質などを作り出す同化があります。
多くのエネルギーを作り出す異化としてのエネルギー代謝と、同化としてのエネルギー代謝の両方があって、初めてエネルギー代謝が行われたと言うことができるのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)