小児肥満というと、一般には見るからに太っている子どものことを指すときに使われる用語ですが、中には見た目はスリムで、どう考えても肥満ではないという状態であるのに、体脂肪計(体組成計)で測定すると肥満の領域となっている子どもがいます。医療業界では“スリム型肥満”と呼ばれています。
成長期の子どもは、内臓も筋肉も成長していますが、同時に体脂肪も増えていきます。特に女性は、成長して女性らしい体つきになっていくときには体脂肪が増えています。成長期に食事の摂りすぎ、運動不足によって体脂肪が増えすぎると太っていくのが普通であるのに、太っていない、むしろやせているのに肥満ということが、なぜ起こるのかというと、エネルギー代謝を促進する筋肉が減っていることが指摘されています。
小児肥満の子どものための効果的な食事指導と運動指導のプロジェクトに加わったときに気づいたのは、スリム型肥満の女児の母親の多くが太っていることでした。親と離して子どもと話をしたときに、ダイエットのことを聞いています。小学校高学年から中学生ではダイエットなど必要ないはずと思われがちで、見た目がスリムなら絶対に必要ないと判断されるところですが、スリムな女児がダイエットに励んでいた、それも母親に気づかれないように食べるものを減らしていたという実態がわかりました。
その理由は簡単なことで、多くは「母親のようになりたくない」という微妙な女心からでした。ダイエット知識がない子どもは食べる量を減らしてしまいますが、その結果として体重が減ったときには筋肉も減っています。知識がない状態では食事を減らすダイエットは続かなくて、食事を増やして体重が元に戻ったときには増えているのは脂肪だけです。
ダイエットをして、リバウンドをして、またダイエットということを繰り返していると筋肉が減って、太りやすく、やせにくい身体になってしまいます。そんな少女にこそ、しっかりと食べて、運動もして、太りにくく、やせやすい体質になる方法を教えたいのですが、なかなか好機がないのが実情です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)