エネルギー物質のATPは何をしているのか

「ATPは代謝のエネルギーですか」という質問をしてきた雑誌記者がいました。詳しく答える代わりに、専門書を紹介することを以前はしていましたが、今は資料を出すのではなく、口で言ってわかる程度の話をして、わかりにくいところだけを資料を渡すようにしています。以前のように専門書を示すと、それを読んで、もっともっと詳しく知りたいという質問が次々に寄せられるようになって、返答に1日かかったというのはまだよいほうで、返答すると質問がきて、また返答をするといった調子で3日も4日もかかったことがありました。それからは“適当”な返答、つまり“適して当然”の返答にするようにしています。
それでATPは代謝のエネルギーかという話ですが、ATP(adenosine triphosphate)はアデノシン三リン酸というアデニンとリボースにリン酸が3個つながったものです。アデニンは核酸を構成する塩基で、リボースは単糖です。リン酸を結合する働きがあるのですが、リン酸が1個離れて2個になるとADP(adenosine diphosphate)となります。そして、リン酸が1個離れるときにエネルギーが発生します。ATPはエネルギーではなく、ADPになるときに発生するのがエネルギーです。
例をあげると、ATPはガソリンのようなもので、ガソリンはエネルギーを発生させる燃料です。だから、ATPは代謝のエネルギーということではなく、あえて言うならエネルギー源です。
ATPは活動が盛んになり、エネルギーの材料となる糖質(ブドウ糖)や脂質(脂肪酸)が燃焼したときに多く作られるので、体内での発生量は個人によって、活動量によって行っています。ですが、だいたいの発生量は体重と同じ重量とされています。そんなにも多くのエネルギー源が発生しているのかと思われるかもしれませんが、ATPとADPの間をリン酸が行き来しているので、ATPが多く発生したといっても体重が増えるようなことではありません。
ATPが作られるのは細胞のミトコンドリアの中のTCA回路ですが、ミトコンドリアに糖質と脂質が多く取り込まれて、TCA回路で燃焼が進めば多くのATPが発生します。そして、エネルギーが多く発生するわけですが、このエネルギーは電気の流れのように他のところに送られて、離れたところで使われることはありません。あくまで発生した細胞の中で自家消費されているだけです。それぞれの細胞には役割があり、ホルモンを発生させる細胞であればエネルギーを使ってホルモン分泌を高めることができます。細胞を働かせているのは酵素ですが、酵素は酵素を作り出している細胞の中で発生するので、そのためにもエネルギーは使われています。もちろん細胞分裂も遺伝子の分裂もエネルギーが使われています。
一部の細胞だけでなく、すべての細胞を働かせて、全身の機能を高めるためには、すべての細胞の中で発生するATPを増やし、エネルギーを増やすことが必要になります。そのために重要になってくるのはミトコンドリアに糖質と脂質を取り込まれる量を増やして、燃焼しやすい形のアセチルCoAに変換される量を増やすことです。そのために欠かせないのが三大ヒトケミカルと呼ばれるα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。