エネルギー物質のATPは突然発生するのか

大晦日が終わり、年明けした深夜0時にメールが入りました。いわゆる“あけおめメール”かと思って開いてみたら、初仕事となる質問でした。よく連絡をしてくるテレビ番組のディレクターから「TCA回路ではいきなりATPが発生するのですか」という究極の問い合わせでしたが、これは1年の情報発信の締めくくりであり、本年のテーマでも中心としていきたいテーマとも関係しているので、さっそく返答させてもらいました。
細胞の中には、それぞれ100〜3000個ほどのミトコンドリアが存在しています。細胞の図を見ると、核が真ん中に大きく描かれ、ミトコンドリアが3〜4個描かれているので、それほど多くはないと思われがちですが、かなりの量になっています。30倍も個数が違うのは、エネルギーを多く作り出さなければならない脳、心臓、肝臓、腎臓、筋肉には特に多くのミトコンドリアが必要となっているからで、必要性が高まるとミトコンドリアは増えていく特徴があります。ミトコンドリアは直径0.5μm、長さ2〜3μmと小さなものですが、全部のミトコンドリアを合わせると体重の10分の1ほどにもなります。
ミトコンドリアの中にはエネルギーを発生させるエンジンのようなTCA回路があります。ミトコンドリアの中に取り込まれたブドウ糖や脂肪酸がアセチルCoAに変化してTCA回路の中で生化学反応を起こしてエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作られます。このような説明がされていて、私たちも便宜上そういった表現をしていますが、いきなりATPが発生するわけではないのです。アデノシンは核酸を構成する塩基のアデニンとリボース(単糖)が結合したものですが、このリボースに2分子のリン酸が結びついたADP(アデノシン二リン酸)があって、これに1分子のリン酸が結びついてATPとなります。つまり、ATPは3分子のリン酸で構成されているわけです。
このATPから1分子のリン酸が離れてADPになるときにエネルギーが発生します。体内には100gほどのATPがあり、ATPとADPの間を行き来することで体重と同じくらいのATPが1日に発生しています。体重と同じくらいのATPが作られ、ここからエネルギーが発生しているということで、いかに多くのエネルギーが生命維持に必要かということがわかります。
ADPは充電前の電池のようなもので、充電されたのがATPという考えもされます。糖質1分子はTCA回路で36個のATPとなると説明されています。このほかに糖質がTCA回路の前に2個のATPが作られるので、合計で38個となります。
この返答をしたところ、さっそく返信があり、「エネルギーは他の細胞でも使われるのですか」という質問が追加でありました。多くのエネルギーが筋肉で作られて、これが他の細胞で使われるなら筋肉運動をすれば全身の細胞を元気になることができるということですが、残念ながら細胞で発生したエネルギーは細胞の中だけで使われています。細胞は、それ自体が一つの生命体のようなものなので自家消費しかされないのです。
となると、全身の細胞を元気にしていこうと思ったら、TCA回路の働きを高める成分が必要であり、それが日本メディカルダイエット支援機構として積極的に研究を進めている三大ヒトケミカルのα‐リポ酸(R体)、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。