新型コロナウイルス対策として外出自粛が強く求められている中で、出歩いている人の言い訳の言葉によく登場するのは「偉い人も会食をしているのだから」ということです。偉い人が誰を指して、どの会食を指しているのかは多くの人がわかっているだろうはずですが、飲食をして話をしたいという気持ちは多くの人に共通しているようです。
日本医師会の会長の「緊急事態宣言下においては、全国会議員の夜の会食を人数に関わらず、全面自粛してはどうか」との発言はインパクトがありました。さらに「国会議員に範をいただきたい。『まず隗より始めよ』です。そのような行動が国民の緩みの解消につながる。4人以下の会食なら感染しないと思うなら間違いです」という発言も納得できることです。
“隗より始めよ”は「大事業などの遠大な計画は手近なところから行うとよい」という意味で、これがメディアでも紹介されていましたが、もっと踏み込んで「物事に挑戦するに当たっては最初に言い出した者がまずは取り組むべきだ」という意味のほうが相応しいように感じます。ちなみに、この故事成語は中国の史書『戦国策』に由来しています。戦国時代という言葉は、この書に由来するとされています。
今の感染拡大は新型コロナウイルスという変異するたびに強力になる見えない敵との戦いで、戦国時代の対応が必要になってきます。
そんな“戦国時代”に会食が辞められないのは、共犯関係の構築ではないかとの考えが出されています。会食は食事を通じて仲良くなる目的がありますが、会食の自粛が強く求められる時代に、こっそりと会食をするのは悪いことをしている共犯関係そのものです。会食を通じて関係を強めていくだけでなく、共犯関係を構築して抜け出せなくするという作戦ではないか、という気持ちを強くしている人も少なくありません。これはコロナ禍の今でこそ使える作戦であるだけに、緊急事態宣言下での夜の会食自粛を求めるのは無理なことかもしれません。