新型コロナウイルス感染症の感染拡大で国民の健康度が低下したことについては、いろいろな機会に指摘してきました。外出自粛での歩行不足と、室内にいる時間が長いことによる食べ過ぎ・飲み過ぎ、ストレスも強まった上に、マスク着用による酸素吸入の低下、そして通院の減少など、この状態が長く続いたら、回復が困難なほどの体力も筋肉も気力も低下してしまうことにもなりかねません。
国民的に健康度が低下するというと、自分が病気になること、介護を受けるのが早まることなどを考えがちですが、そんな国民が増えてきたときに、それを支える医療と介護の人材もパワー不足が心配されます。厚生労働省が発表している、2040年には医療と福祉で働く人材が全労働人口の20%になるという推計は、コロナ禍の前の状況で実施されたもので、コロナ禍での健康度の低下は、もちろん組み込まれていません。
支えられる側の高齢者の健康度が低下したら、それだけ介護の負担が大きくなります。それなのに介護する側の健康度が低下して、なかなか回復しないようでは、海外からの人材が期待できない中にあっては、自力での克服に頼るしかありません。コロナ禍で外出自粛を要請したのと同じ口で、今度は健康度を高めるために外出して歩いて健康になってくれ、と言うしかないという状況です。
1年半以上の期間とはいっても、外出の時間が減っただけで、そんなにも健康度が低下するものだろうかという疑問も湧いてくるかもしれませんが、筋肉の量だけに注目しても高齢者は特別な運動をしなければ1年で1%の筋肉が減っていくとされています。2日間だけ寝たきりの状態でいると1%の筋肉が減っていきます。出歩かなかった期間に筋肉を減らさないように、それなりに動いていた人はよいとしても、あまり動かなかったという人は筋肉がかなり減っているはずです。
筋力は筋収縮力(筋肉の強さ)、筋持久力(長く動かす能力)のほかに、筋代謝力があげられます。筋代謝力は筋肉がブドウ糖や脂肪酸をエネルギー源として消費してエネルギーを作り出す能力のことで、これが筋肉を動かさなかったことによって低下すると、血糖値や中性脂肪値が上昇して生活習慣病のリスクが高まっていきます。だから、歩くだけでもよいので、まずは体を動かすこと、そして歩き慣れてきたら積極的に生活習慣病を予防する健康ウォーキングに取り組んでほしいのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)