コロナ禍の現状から考える将来への備え

新型コロナウイルスの感染拡大によって、「住民の安全と健康を守る」ための施策を求める声が高まっています。新型コロナウイルス感染症は外出自粛と三密回避の住民の自主努力によって感染拡大を抑える効果が認められたものの、自宅で長く過ごすことによる運動不足、過食や過飲(飲酒)、特定健診の受診率の低下、医療機関の利用減少などから、住民の生活習慣病や認知症の増加、健康寿命が短くなることが強く懸念されています。
新型コロナウイルス感染症は高齢者や基礎疾患のある人は感染しやすく、また重症化しやすいことが確認されています。新型コロナウイルスの特徴として血栓の発生による重症化が指摘されていますが、基礎疾患の糖尿病、高血圧、心疾患、脳血管疾患、肥満は、どれも血管にダメージを与えるものであり、血栓は国民の死因の3分の1近くを占める心疾患、脳血管疾患の引き金となっています。
新型コロナウイルスが血管の内腔を覆う血管内皮細胞に感染すると炎症が起こり、血小板が血管内腔に付着しやすくなります。これと同時に、白血球のマクロファージによって炎症性サイトカインが多く作られ、血小板が血管内腔に接着しやすくなって血栓が多く発生するようになるというメカニズムが知られています。
基礎疾患がある人は炎症が悪化しやすく、血栓が詰まることによって血流が低下することから免疫細胞の活動が弱まり、免疫低下によって感染率が高まることも指摘されています。
新型コロナウイルスの感染を防止するための地域の対応は健康寿命延伸という地域の重要課題にとって逆行させる要因ともなりかねない状況となっています。健康寿命延伸は、将来的な医療費の増大を抑える有効な方法であることから、直接的な感染予防と同時に、感染した場合に重症化させないこと、免疫を強化するための健康の維持・増進の対策が自治体に強く求められる時代となっていると考えています。