健康食品の通販番組やコマーシャルを見ていると、「糖の吸収を減らす」ということを言っているシーンを目にすることがあります。この場合は、糖尿病の予防や改善を目的とした商品で、血糖値を下げるためには、血糖値を上昇させるものであるブドウ糖の吸収を減らせばよいということで、「糖の吸収を減らす」という魅力的な言葉が使われています。
これは本当のことなのか、ということですが、健康食品の素材の中には糖質を分解させる消化液の酵素の働きを阻害するものがあります。成分としてはサラシア、コタラヒム、グァバ、桑の葉、白インゲン豆などで、消化酵素のα‐グルコシダーゼやα‐アミラーゼの働きを阻害する作用があります。
糖尿病の治療薬ではα‐グルコシダーゼがキーワードで、この働きを抑制する成分によって、ブドウ糖への分解が抑えられると、吸収されるブドウ糖が減り、その結果として血糖値が下がります。血糖というのは血液中のブドウ糖のことです。医薬品の成分は、長く効果が続くことで小腸から吸収されるブドウ糖を減らすことができます。医薬品の成分そのものが吸収を減らしているわけではなくて、あくまでも分解の抑制です。
結果として同じことになっているということですが、健康食品の成分は、医薬品のように長く効果が続くわけではありません。ある程度の時間、分解を遅らせると、一時的にブドウ糖が吸収されなくなり、もしも全部のブドウ糖が吸収されても血糖値が急激に高まることがなくなり、その分だけ膵臓から分泌されるインスリンも減ります。そのために膵臓の負担が減り、インスリンの分泌が急に低下して糖尿病が悪化しにくくなることが期待されます。
このようなことが事実であるのに、「糖の吸収を減らす」と言ってよいのか、不当表示にならないのかという疑問が生じます。健康食品で小腸からのブドウ糖の吸収を阻害するのはギムネマ・シルベスタで、これと同様の働きをする医薬品は存在していません。