乳酸菌が1回分に100億個も含まれているから腸内環境が整えられるというイメージが広まったのは、青汁のコマーシャルのおかげかもしれません。「なんと100億個」というフレーズで、青汁の栄養も摂れるうえに、乳酸菌が100億個も摂れるという“お得感”で人気が一気に高まりました。
これだけでは治まらず、「なんとなんと500億個」というフレーズで、腸内環境をよくするというイメージのほうを優先させて、さらに青汁の栄養素も摂れるというコマーシャルになっていました。
これを見て、携帯電話の機能をいくつもあげて、最後に通話もできるというジョークを思い出す人もいますが、乳酸菌の500億個が、そんなにも凄いことなのかという疑問も浮かんできます。
腸内細菌は、以前は100種類で100兆個といわれたものですが、それが300種類で300兆個となり、500種類で500兆個と増えていきました。今では1000種類で1000兆個にもなっています。
日本人の腸内細菌が急激に増えてきたということではなくて、研究によって実態がわかってきたということです。1000兆個に対して100億個は10万分の1の数です。500億個でも2万分の1ということで、腸内の1000兆個を変えていくには、1日に3回飲んだとしても18年はかかる計算になります。
よい腸内環境の人は「善玉菌が2、悪玉菌が1、日和見菌が7」の割合とされています。善玉菌が5分の1として、そのうちの半分を口から入れた乳酸菌で補おうとすると、2年くらいになります。
このことを根拠にして、2年も続けていると腸内環境が完全に整えられるということを伝えて販売している会社もあるのですが、重要な情報が抜けています。それは乳酸菌が小腸に多く棲息していて、大腸に多く棲息するのはビフィズス菌だということです。
多くの人が乳酸菌に期待するのは大腸の調子ですが、乳酸菌だけでは大腸の環境を整えるのには足りないということです。大腸の環境を考えたら、ビフィズス菌を中心とした大腸を整える菌を摂ることと、大腸内の善玉菌の栄養源となるオリゴ糖などの糖類や食物繊維を摂ることがすすめられます。