シャワーと自律神経の関係

日本メディカルダイエット支援機構では、入浴と食事のタイミングによる効果的な体脂肪コントロール法について研究して、スポーツ選手など体脂肪の調整が必要な人の指導に用いています。特に効果があるのは夕食とのタイミングで、昼間には自律神経の交感神経がメインで働いていますが、夕方以降は副交感神経がメインとなります。夕食前の時間帯は交感神経と副交感神経の切り換えのタイミングとなっています。
糖質のブドウ糖に反応して分泌されるインスリンはブドウ糖を細胞に取り込ませるように作用するホルモンであると同時に、肝臓で脂肪酸を合成させるホルモンでもあります。肝臓で合成された脂肪酸は、肝臓の中で脂肪酸3個とグリセライドという脂肪の一種とが結びついて中性脂肪となります。中性脂肪が多く作られると脂肪細胞の中に蓄積する脂肪が増えることから太っていくようになります。インスリンの分泌は副交感神経の作用によって高まっていくので、脂肪を減らしたい人には副交感神経の働きを抑えた状態で食事をしてもらいます。
入浴は低めの温度で、長めにお湯に浸かっていると副交感神経の働きが高まります。この状態では心身ともにリラックスして、心臓の鼓動が抑えられ、血圧の上昇も抑えられるようになります。これは身体のためにはよいことですが、この状態で夕食を食べるとインスリンが多く分泌されて体脂肪が増えるようになります。やせたくない人、脂肪としてエネルギー源を溜め込みたい人には好都合のことですが、やせたい人にとっては逆効果になります。
そこで体脂肪に蓄積される脂肪を増やしたくない人には、交感神経を刺激するように熱めの温度の入浴をすすめています。交感神経が盛んになるのは42℃以上の入浴で、40℃以下の入浴では副交感神経が盛んに働くようになります。交感神経が刺激されっぱなしの状態では身体の疲れが取れなくなるので、副交感神経によって興奮が抑えられるぬるめの入浴にして、浴室から出る前に熱めのシャワーを浴びると交感神経に切り換わった状態で夕食に向かうことができます。
湯船に浸かるのは面倒だからとシャワーで済ませる人もいますが、ゆるめの温度のシャワーでは身体が温まりにくく、身体が冷えるようにもなるので、温度は42℃以上となるのが普通です。しかし、初めから42℃以上の入浴ではリラックス効果が得られなくなるので、ゆるめのお湯に浸かってから後でシャワーを浴びることをすすめています。
このことを雑誌記者に説明したところ、「興奮状態にならないようにしたい人にはシャワーはよくないのか」と聞かれました。夏場は温度を低めにしてシャワーで済ませてもよいのですが、秋以降には室温も身体も下がっているので、どうしてもシャワーの温度は高くなり、交感神経を刺激する温度になります。興奮状態になって血圧が上昇することなどを心配する人は、シャワーではなく、ぬるめのお湯に入って副交感神経の働きを盛んにすることをすすめています。
シャワーは身体の表面を温めても、筋肉の中までは温めてくれません。それに対して、ぬるめの温度での入浴は身体を芯から温めてくれるので、浴室を出てからも体温が適度に保たれて、心臓や血管にかかる負担を減らしてくれるのです。