スーパーフードは本当にスーパーなのか

スーパーフードは栄養が豊富で、その栄養素がバランスよく含まれている自然食品を指しています。その代表的なものとしてチアシード、キヌア、ヘンプシード(麻の実)があげられています。こういった定義に囚われずに、といったら聞こえがよいのですが、栄養豊富なものは何でもスーパーフードにして売っている例もあり、首をかしげることも少なくありません。
ここではチアシードを例にして話を進めさせてもらいますが、栄養豊富で、バランスがよいので期待通りの食品であって、アメリカのセレブが活用しているので美しくなれるとかスリムになれるというイメージの通りになるのかという話です。
チアシードは古来よりアステカ族が常用してきたな南米のミント種に属する植物種子です。n‐3系(オメガ3)脂肪酸が約23%と食品の中では極めて含有量が高く(一番とうたっているものもあります)、n‐3系脂肪酸には血管保護、血流促進などの作用があります。このほか、食物繊維、たんぱく質、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、抗酸化成分が豊富に含まれています。
34%も含まれている食物繊維は水溶性食物繊維であって吸収性が高く、胃の中で水分を吸ってゲル状(ゼリー状)になり、約14倍にも膨らみます。そのため胃が膨らむことで腹持ちがよくなり、吸い込まれた水分は胃の中から徐々に離れていくことから、水分が急激に失われることがなくてランニングフードとも呼ばれています。これらの機能によって、血糖値、中性脂肪値、血圧の降下作用が認められています。
という話を聞くと、チアシードを食べることだけで健康になれそうな気がしてきますが、栄養豊富であることと実際に体内に栄養が吸収されるかどうかは別の話です。栄養豊富な食品といえば種子と豆があげられますが、種子は殻が固くて、胃液では消化されません。消化されないと吸収はされないので、そのまま口の中に入れても栄養や優れた成分が体内に入ってくるわけではないわけです。
これはキノコにも言えることで、以前に大ヒットしたアガリクスは豊富に含まれる多糖類が免疫細胞の栄養源になるということで、がんの予防・改善を求める人に使われていました。初めに日本に紹介されたときにはお湯で煮出して飲むことがすすめられていましたが、アガリクスは乾燥させたキノコで細胞壁が極めて固いことから煮たくらいでは多糖類が出てこないことがわかりました。そこで、細胞壁を破壊したものや発酵させて有益菌に細胞壁を分解させたものが出てきました。
これと同じように、種子の場合も細胞壁を破壊しておけばよいわけですが、破壊や発酵は加工食品やサプリメントだからできることで、食品そのもので吸収される形にして販売されることは、なかなかないことです。ごまをすり潰したすりごまくらいでしょうか。ここで例としたチアシードは種子そのものなので、それと同じことが言えます。
チアシードを例にあげたのは、他の種子のように腸を素通りして終わりというわけではなくて、優れた水溶性食物繊維の効果だけでも充分なくらいだからですが、栄養豊富と吸収量は別問題ということを頭に置いて、何を食べればよいかを考えてほしいのです。