神経伝達物質のセロトニンは脳機能を正常に保つために必要となります。そのセロトニンは脳よりも腸の中で善玉菌の発酵によって多くが作られています。腸内環境が整えられて腸の機能がよくなると脳機能が高まることも確認されています。という事実を積み重ねて、腸の状態をよくする乳酸菌などを摂ると脳機能が高まる、認知症予防によい、ということが広まっています。
あるメディアから、インタビューをした医師から「腸の状態がよければ脳の状態がよくなる」というコメントがあったが、ネット検索をしたら「腸で作られたセロトニンは脳に効かない」という情報があった。どうしたものか、との相談を受けました。
なぜ効かないという情報が出ているかということですが、それは血液脳関門をセロトニンが通過できないからです。血液脳関門は、脳血管から脳の中に不必要な物質が通過しないようにしている仕組みで、ここを通過できないのでは、どんなに脳に有効な成分であっても増やすことはできません。
その話をしたところ、それならば腸の状態がよくなると脳機能が高まるのは、どういった理由なのか、という質問がありました。これには決定的な答えはまだないのですが、次のような返答をしました。
一つには腸内細菌の悪玉菌が増えると、悪玉菌が作り出した毒素(有害物質)が大腸壁を通過して血液中に入ります。毒素は細胞の働きを低下させることから脳機能に影響が出るという、これは説得力に弱い答えでした。
次の答えですが、腸内細菌を増やす栄養源(エサ)になる水溶性食物繊維には、余分な脂肪を吸着して吸収されにくくする作用があります。血液中に脂肪が増えすぎると血流が低下するので、脳機能にも影響が出るということで、これは納得してもらえました。選択的に体に必要な脂肪を吸収させて、多いと害が出やすい脂肪を排泄させるシクロデキストリン(環状オリゴ糖)なら、もっと効果が出るというコメントを付け加えました。
もう一つですが、有酸素運動をすると血流が高まり、腸の温度も高くなります。腸内細菌の悪玉菌は腸の温度に関係なく増殖するのですが、善玉菌は温かな環境でないと増えないので、有酸素運動をすることで善玉菌が増えたということです。有酸素運動は脳の血流を高めて、脳機能改善に役立つことが知られているので、これを最後の理由として答えました。
これについては話をした側も完全には納得をしていないので、さらに調査と研究を進めていきます。