タバコをやめると太るのは本当か

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。その中の喫煙に関する項目で、ダイエットのための喫煙が語られています。これについて、メディカルダイエットの立場からコメントをさせてもらいます。
タバコをやめられない理由として、ストレス解消とともに太ることをあげている人がいます。喫煙すると太りにくいのは事実です。喫煙によってストレスが解消されるということで、これが理由としてあげられることがありますが、ストレスを感じると筋肉の中に蓄積されているグリコーゲンが分解されてブドウ糖として血液中に放出されます。ストレスを与えている危機的な状況から逃れるためにはエネルギー源が必要で、すぐにエネルギー化されるブドウ糖が補給されるわけです。
肉体的なストレスでは多くのブドウ糖が必要ですが、精神的なストレスでは、それほど多くのブドウ糖は必要にはなりません。そのため、余分となったブドウ糖は肝臓で脂肪に合成されて、その脂肪が脂肪細胞の中に蓄積されるようになります。ストレスを強く感じる状態が長く続くと、筋肉が減って脂肪が増えるということになるわけです。こういったメカニズムはあるものの、タバコを吸うこととダイエットには大きな影響を与えません。
タバコを吸うと自律神経の交感神経の働きが急に盛んになって、胃が大きく蠕動運動を始めます。胃の中に食べたものが入っていると、まだ消化されていないうちに小腸へと運ばれることになって吸収される量が減少します。タバコのニコチンなどによって胃粘膜微小循環系決行障害が起こり、吸収された栄養が体内に運ばれにくくもなります。食後にタバコを吸うと胃が楽になるという人がいますが、これこそが消化しないまま小腸に送られている証拠です。
タバコをやめた途端に太るというのは、消化・吸収が正常に戻っただけのことで、それまで食べ過ぎていたということです。