ダイエットのための行動療法

行動療法は、さまざまな場面で現状の克服のために使われています。メタボリックシンドロームの指導でも有効に使われている例が報告されています。食べすぎでメタボになっている人に、「決められた量よりも絶対に食べてはいけない」と指導しても、「それが守れるくらいなら、こんなに太っていない」という反論が返ってくるだけで、なかなか守ろうとはしてくれないものです。
それでもガンガン指導する人もいて、仕方がなくやってみたものの、結局は続かなくなり、途中で投げ出すことになってしまうのですが、ここをターニングポイントにして、よくなっていく人と悪くなっていく人に分かれます。
よくなっていく人のほうは「他に続けられる方法はないのか」と考え、「ひょっとしたら指導した人と相性がよくなかっただけかも」と考えたりします。こういう考えをしてくれると改善策も見出すことができます。
一方の悪くなっていく人のほうですが、「専門家が自分のことを考えて、一生懸命にやってくれたのに、それが守れないなんて」「なんて自分はダメな人間なんだ」と考え、これまでの努力を“卓袱台返し”のように全面否定して、自暴自棄になってしまうこともあります。
ダイエットのための食事制限の場合には、箍(たが)が外れて、我慢していたものを際限なく食べる、それで一気に太ってしまうという人もいます。こうなるとリバウンドを遥かに越える状態で、指導するのを諦めるしかない、ということにもなりかねません。
これは指導されたほうの問題で、指導したほうの問題ではないと考えるかもしれませんが、“定番の指導が通じないかもしれない”と感じた段階で、やるべきことがあったのです。それが行動療法の手法に従ったアドバイスです。
食べてはいけないと自制していたのに、食べてしまったのは目の前に食べ物があって、食べやすい状態で置かれていたからです。わざわざ料理をしなければならないものでは起こりにくいことです。目の前に出されていなかったら、手を伸ばさなかったかもしれません。見えない所にしまっておけばよかったのです。家の中に控えなければならない食べ物があったから食べようとするわけで、買ってこなければよかったということです。
なぜ買ってきたのかということが問題ですが、食べてはいけないという意志が弱かったということが一つにはあります。“自分へのご褒美”、ダイエットに頑張ったら少しはご褒美もなければと考えることはモチベーションキープのためには悪いことではないとしても、それは成功してから買いに行けばよいことで、初めから用意をしておくから、ご褒美ではないタイミングでも食べてしまうことになるのです。
なぜ買ってきたのかということで、もう一つ触れておきたいことは、いつ買い物に行ったかということです。空腹のときに買い物にいくと余計なものまで買ってしまいがちです。食事をした後に買い物にいくと余計なものは買わなくなります。少なくとも買いにくくなります。
このような川上に遡りながら原因を考えていくと、何度も断ち切るタイミングがあったことがわかります。自分はダメだと考えるのではなく、分かれ道に戻ってみて、やり直して、今度はよい選択をするのが行動療法のポイントです。