ダイエットのデータを取りたいので協力してほしい、という依頼はよくあります。中には、ダイエットの効果が出やすい人を紹介してほしい、という困った依頼がくることあります。ダイエットの効果が出やすいような素材を教えてほしい、出やすい素材の組み合わせを教えてほしい、という依頼ならわかりますが、効果のほどに関係なく、よい結果を出して販売促進に使いたいということです。そういった依頼者には「本当に効果があるものを作ってから試験をしたらよいのでは」とアドバイスをするだけにしています。
というのは、ダイエット業界には“やせ屋”と呼ばれるダイエット商品を使って、しっかりと期待どおりの結果を出してくれるプロが存在しています。私どもに安易に聞いてくるのではなく、頑張って探せば、必ず巡り会うことができます。それくらい業界では有名な存在です。
普通に生活をしていても寝る前と目覚めたときに体重を測定すると800gくらいの差はあるのが普通です。代謝がよい人では夕食をしっかりと食べていても、寝ている間に代謝が進んで、1kg以上の減少は普通にあります。まず、代謝がよくて、最近になって太った人が探されます。依頼を受けてから太ってくれるプロもいて、あるダイエット食品の使用前の体重を測定する2〜3日前から多く食べて、できるだけ動かないようにして、体重測定に臨みます。
大相撲の世界に飛び込むときに体重が足りないからと、死ぬ思いをしながら水を飲めるだけ飲んだ、という話も伝わっていますが、それと同じことをする人までいます。そんなことをすれば体重が2〜3kgも増えたところからスタートすることができます。
もともと太っている人は、脂肪を溜め込みやすい体質で、ダイエット食品の効果が出にくいだけでなく、運動をしても脂肪が燃焼しにくい特徴があります。ところが、適度に太っている人が急に食べて、動かずに太ると、元に戻ろうとする恒常性維持能力が発揮されて、体脂肪の量も元の状態に戻ろうとします。ダイエット食品の広告の注意書きや、テレビ番組のテロップに「バランスの取れた食事と適度な運動を実施しました」などと掲載されていることが多く、ダイエット食品だけでやせたわけではないことが書かれています。
ということは、食事制限と運動によって特にやせやすい人が選ばれるわけです。これだけの運動をしたと書かれていない場合には、“適度”というのは主観であって、実は他の人では続かないような運動をしていることもあります。そんな運動をしなければならないときに耐えられることも“やせ屋”には求められています。一般的には2週間ほどがダイエット期間とされますが、ある特定保健用食品(トクホ)のデータを見ていたら、1.5kgの体重減少が示されていました。詳しい条件を見たら、70kgの人の3か月間での成果で、1か月なら500gです。こんなことは“やせ屋”の皆さんには楽勝の目標です。
さらに詳細を見ていたら、なんと体重は減ったものの体脂肪には大きな変化がなかったものまであり、体脂肪が減ったデータでは体重が増えていたというものもありました。体重が減って体脂肪が減っていないということは筋肉が落ちたということでしょうし、体脂肪が減って体重が増えたということは筋肉運動をしてもらって筋肉を増やしたということです。詳細データは機能性表示食品では消費者庁のサイトに全部出ているので、これを見るのは、ある意味で楽しみでもあります。