ドライフルーツは未病食になるか

フルーツ(果物)はビタミン、ミネラルの宝庫と考えられています。それは間違いないことですが、フルーツは“水菓子”と呼ばれるほど水分が多く、全体の食べる量と比べると、それほど多くの栄養素が摂れるわけではありません。そこで効果的にフルーツの栄養素を摂るためにすすめられるのがドライフルーツです。フルーツを乾燥させて水分の量を大きく減らしたことから、重量あたりの栄養素が多くなっています。凝縮された状態担っているので、同じだけの量を食べても摂ることができる栄養素の量が増えることになります。
フルーツは、すべてが食べられる“全体食”のように語られるものの、その多くは皮を取り除き、種を抜いて食べられることから、必ずしも全体を食べているわけではありません。種は次の世代に伝えるための重要な役割をしているので栄養豊富ではあるものの、硬くて消化されにくく、そのまま食べたのでは栄養の吸収を期待することはできません。ブドウの種はグレープシードと言いますが、その名がつけられた食品はグレープシードオイルといって種から抽出しています。
ドライフルーツは種を取り除いてから乾燥させるものと、そのまま乾燥させるものがありますが、どちらにしても皮は剥きません。皮ごと乾燥させることによって、まさに皮ごと食べることができます。
フルーツに色鮮やかなものが多いのは、強い紫外線を浴びているからです。強い紫外線を浴びると活性酸素が発生します。これはフルーツも他の植物も、人間も動物も同じことです。活性酸素の害に打ち克つために、植物は色素を抗酸化物質として蓄えています。動物は紫外線が強い環境でも日陰に隠れることができますが、植物はその場に居続けるしかなく、抗酸化物質の量が生き延びるための重要な役割をしています。
色鮮やかなフルーツほど紫外線を多く浴びていて、抗酸化物質を多く蓄積していて、自らを守る効果も高くなっています。その抗酸化物質を食べて、自らの抗酸化力を高めているのが私たちです。
「赤ワインのポリフェノールが動脈硬化を予防する」ということを研究発表して、“赤ワインブーム”“ポリフェノールブーム”を巻き起こすきっかけを作ったのは板倉弘重医学博士です。国立健康・栄養研究所の臨床栄養部長だったときの研究実績から始まりましたが、日本メディカルダイエット支援機構の理事長の主治医でした。“でした”というのは、理事長は東京から岡山に移住したからですが、“晴れの国”の岡山では紫外線の影響を受けやすく、抗酸化成分の重要性をヒシヒシと感じています。
活性酸素が動脈硬化の要因となるのは、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールが活性酸素によって酸化して、変性(酸化)LDLコレステロールとなり、白血球の一種のマクロファージが変性LDLコレステロールを取り込んで血管壁の内壁に入り込んでいきます。これが続くと、血管壁が徐々に硬く、厚くなり、動脈硬化に向かって進んでいくことになります。
動脈硬化はLDLコレステロールが増えすぎることが原因であるとの認識で、コレステロールが多く含まれる肉類などを食べることが要因と考えられがちですが、血液中のコレステロールのうち食事に由来するのは約20%で、残りの約80%は肝臓で合成されています。食事の調整で動脈硬化対策をするのは難しいことで、動脈硬化のリスクを高めているのは活性酸素であるので、抗酸化成分を摂るべきです。
その抗酸化成分が凝縮されているドライフルーツは最も有効な食品の一つであり、血圧や血糖値、中性脂肪値などが基準値を超えていても、まだ合併症や、動脈硬化による脳血管疾患・心疾患(心臓病)が現れていない状態、つまり健康と病気の間の“未病”の人には有効であり、ドライフルーツの有効活用を考えたいものです。