ピリドキサミンは新たな有効成分か

「ピリドキサミンって、どんな成分なのですか」という質問がテレビ局のディレクターからあった、そのすぐ後に雑誌記者からも「ピリドキサミンは新しく発見された成分ですか」という質問がありました。このコーナーでも初めて出てきた言葉で、聞きなれない名前なので、新たな成分と思ったようですが、統合失調症に対するピリドキサミンの研究発表があって、メディア関係者のアンテナに引っかかったようです。しかし、ピリドキサミンは実は以前から、よく登場していたもので、ビタミンB₆の一つです。
そんな返答をしたところ、「ビタミンB₆は種類があるのですか」と聞かれてしまいました。一般の認識を、あまり意識しないで、私たちも簡単にビタミンB₆と使っていましたが、ビタミンB₆はピリドキシン(pyridoxine)、ピリドキサール(pyridoxal)、ピリドキサミン(pyridoxiamine)があります。少しだけ詳しく説明すると、この3種類はビタミンB₆活性を持つ化合物です。
ビタミンB₆活性というのは、ビタミンB₆の働きをすることで、代謝の補酵素、ホルモン調節などの活性をするものを総称してビタミンB₆と呼んでいるのです。
3種類と書きましたが、それぞれのリン酸エステル型(ピリドキシン 5́-リン酸、ピリドキサール 5́-リン酸、ピリドキサミン 5́-リン酸)があり、全部で6種類が数えられています。
体内ではピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンともにピリドキサール 5́-リン酸に変換されます。そして、ビタミンB₆にまで消化されてから吸収されるので、元々の種類が違っていてもビタミンB₆としてまとめて語られることが多くなっています。
医薬品成分としてのピリドキサミンは特徴的な働きをするとしても、食品から摂取しても最終的に他のビタミンB₆活性がある成分と同じに変化するので、この食品を食べれば、こんな医薬品的な効果があると語っても仕方がないことです。また、ピリドキサミンの有効性が確認されたとしても、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンは魚や肉に含まれていて、どの魚には、どの成分が多い、どの肉には、どの成分が多いというようなことはなくて、どの成分も含まれています。
では、魚や肉を食べていれば、特に注意することはないのかというと、ビタミンB₆はビタミンB₁₂と並んで、摂取タイミングが重要になります。ビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂は細胞のミトコンドリアの中で脂肪酸を代謝させるのに欠かせないビタミンです。どれかが欠けたら、代謝が低下します。つまり、いわゆる“脂肪が燃焼する”ということが起こりにくくなるのです。
ビタミンB₁とビタミンB₂は体内では24時間は保持されます。だから、1日に1回、ビタミンB₁とビタミンB₂が含まれた食品を食べていれば、よほど量が少なくない限りは足りなくなるようなことはありません。ところが、ビタミンB₆とビタミンB₁₂は体内では12時間ほどしか保持されません。ということは、朝食と夕食でビタミンB₆とビタミンB₁₂が含まれた食品を食べておく必要があるわけです。
それなのに朝食を食べない人は少なくはなくて、夕食を食べないという人もいます。こうなると食品から補えない人もいるので、サプリメントの使用も考えなければならないことになります。
ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。