糖質制限をすると体内に蓄積された体脂肪は減っていきます。体脂肪となる脂肪細胞に蓄積されている中性脂肪は脂肪酸3個とクリセロール1個が結びついたもので、血液中の脂肪酸が減少すると、中性脂肪が分解されて脂肪酸が血液中に放出されます。
この脂肪酸は筋肉細胞まで運ばれて、これをエネルギー源として細胞内のミトコンドリアでエネルギー化されます。ただ、脂肪酸が減少しているわけではなく、脂肪酸からエネルギーが作りされて、そのエネルギーを使って細胞で生化学反応が起こっています。
なぜ、糖質制限をすると脂肪細胞の中性脂肪が減っていくかというと、糖質に含まれるブドウ糖が体内で不足するため、エネルギー源として脂肪酸が使われるからです。血液中のブドウ糖が増えると、その量に応じて膵臓のランゲルハンス島のβ細胞からインスリンが分泌されます。
インスリンは細胞にブドウ糖を取り込む作用があるホルモンで、取り込まれたブドウ糖がエネルギー代謝に使われます。
インスリンには、この他に余ったブドウ糖を肝臓でグリコーゲンに合成して肝臓や筋肉に蓄積させる働きと、肝臓で脂肪酸を合成させる働きがあります。肝臓で合成された脂肪酸は、続いて中性脂肪に合成されます。
糖質制限をすると血液中のブドウ糖が減ることからインスリンの分泌量が減り、肝臓の中性脂肪の合成量が減ります。また、血液中の中性脂肪が減ることから、脂肪細胞に蓄積されている脂肪細胞の分解が進みます。脂肪細胞から血液中に放出された脂肪酸は、肝臓で必要なだけの中性脂肪に合成されて血液中を巡ることになります。
肝臓で中性脂肪が分解されるときには、肝臓でケトン体と呼ばれるエネルギー物質が生成されます。ケトン体は脂肪合成や分解の中間代謝産物で、絶食や低糖質の食事、激しい運動のあとのブドウ糖が極端に減ったときには特に多く生成されて、血液中に放出されます。
ケトン体はブドウ糖と同様に細胞に取り込まれてエネルギー源となりますが、ケトン体は血液脳関門を通過して脳細胞にも取り込まれます。そのため、ケトン体が多く生成されることによってブドウ糖不足が補われることになります。
また、極端なブドウ糖不足の状態では、糖新生も起こります。糖新生は糖質以外の物質からブドウ糖を合成する方法で、これによって体内のブドウ糖がなくなるようなことは起こらなくなります。インスリンには肝臓の糖新生を抑制する作用があり、インスリンの分泌が減ることによって、糖新生が進みやすくなります。
糖新生は体脂肪の減少には有効な方法となるますが、エネルギー代謝の逆ルートを辿ることであり、危機的な状態を乗り切る仕組みであるため、日常的に実践することは危険視されています。数日間だけ糖質をはじめエネルギー源を極端に少なくするファスティングでは身体への負担は問題ないとされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕