コロナ禍で極端に増えたものに粗大ゴミがあります。外出自粛で家の中で過ごす時間が増えたことから整理をして粗大ゴミが増えたというのが、ゴミを集める側の自治体と委託業者の見方のようです。しかし、長く家の中にいることで考える時間があり、自分を見つめ直す機会もあったことから、価値観が変わってしまい、これまでは宝物のように思い込んでいたものが、価値観が違った瞬間に、「いらないものを持っていたことに気づいた」という人も少なくありません。
テレビ番組でゴミ屋敷の報道を見ていて、「なんでゴミを集めているのか」「ゴミが宝物のように見えているのか」という感想を抱く人が多かったはずですが、自分が持っているものを捨てる立場になってみて、ゴミ屋敷の住人を笑えないという感想を漏らした人もいます。
今になって捨てている人に対して、以前から断捨離をしていることを誇っている人にも巡り会いました。断捨離の元々の意味はヨガの行法の断行、捨行、離行の三つの行法を指していて、入ってくる無駄なものを断つ、家にある不要なものを捨てる、物への執着を捨てるということで、身軽で快適な生活を手に入れようとする思想を示しています。単なる片付け、整理整頓とは違っています。
断捨離ブームに乗った女性の著書はメディアで盛んに取り上げられ、片付け上手を目指すだけでなく、近くのコンビニで手軽に買えるものは家にストックする必要がないということまで言い出して、本来なら生きているために必要な生活備品までいらないというような意識を広めました。それが支持を受けて、2010年には流行語大賞(正式にはユーキャン新語・流行語大賞)の候補60語にも選ばれました。
ところが、2011年の東日本大震災によって、全国規模で流通に遅れが出て、コンビニで買おうにも買えない事態になり、本当に家庭にストックしておかなくてもよいのか、という国民の意識の大転換が起こりました。家に何をストックしておくべきかという考えは、人それぞれで、それぞれ拘り(こだわり)があってよいわけです。財産である“癖”をすべて捨てることはなくて、ブームに流されるのではなくて、自分で判断するための癖は残して、妙な拘りだけをなくすのが「なくせ七癖」として考えたいことです。