ポストコロナ「エビデンスでタイアップを釣る」2

テレビ番組のタイアップは、コマーシャルを出していない会社が少しの出費で番組の一部に商品やサービスを紹介してもらうことをいいます。情報の数が少ない地方局ならば地域バラエティ番組のほうからネタ探しをしているので、お金をかけなくても電波に乗せることは難しくはないのですが、全国キー局の番組でタイアップを仕掛けるとなると、それなりの資金が必要になります。しかし、その資金もネタの内容と裏付け、つまり局側が求めるような内容だったら少額か場合によっては無料でもタイアップが可能となります。それは今も以前も大きくは変わっていません。
テレビ業界と元々つながりがあって、番組の企画会議に参加しているメンバーに顔見知りがいたことから、たった1人のつながりでも“芋づる式”にたどっていって、目的の番組の責任者にたどり着くことができました。納豆と豆腐の業界の大々的なPRに参加したときも、初めの納豆は数多くの番組に取り上げてもらえたものの、翌年には企画会議のネタとしても乗りにくくなっていました。納豆でブームを起こしただけに、次のヒットネタが求められるディレクターには豆腐は絶好のネタでした。
しかし、豆腐は納豆と同じ分量で比較すると栄養素の量は少なく、ナットウキナーゼのような特徴的な成分もないので、取り上げにくいということでした。そこで豆腐業界からの働きかけで研究者の先生方を紹介してもらい、しっかりとした研究機関や大学なりの研究データを持ってディレクターに会いました。豆腐の特徴を示すデータを出すだけではなくて、病院栄養管理の重鎮を事務所に迎えていたこともあって、メニュー、調理法、おいしい食べ方もつけました。さらに実際に調理してくれる有名な調理人のリストもつけました。そのまま企画会議に出せるような形にしたわけです。
こうして豆腐が取り上げられると、豆腐も納豆も同じ大豆から作られる食品ということで同時に取り上げてもらえるように交渉をします。過去と同じ切り口では、常に新しいものが求められるテレビ業界では通用しにくいので、納豆の食べ合わせを考えました。納豆は栄養豊富といっても、ビタミンCは少なく、納豆菌は腸内細菌の善玉菌と同じような働きをするといっても、それほど強力ではありません。そこで考えたのがキムチ納豆です。キムチのビタミンと乳酸菌をプラスすると「最強の組み合わせ」というキャッチフレーズで、エビデンスでタイアップを釣り上げてきました。
その後も納豆に混ぜるものを次々と提案しました。それはテレビ番組になるだけではなくて、納豆売り場では納豆に補助食材のキムチ、ゴマ、ノリなどをつけた商品が売られ、納豆の横に組み合わせの食材が置かれるところも増えました。これは自然に起こったことではなくて、リリースをメディアに送るのと同時に販売店のグループにも送っていたことが影響しました。また、納豆の売り上げは以前は右肩下がりだったのを、私たちが加わってから右肩上がりにしたという実績も販売店にとってはエビデンスとなり、納豆も豆腐も売り場面積を伸ばすことができたのです。