諺(ことわざ)をもじって使うのは、もともとインパクトがある言葉は記憶に残りやすく、それを逆の意味にしたり、諺よりも強い印象を残したいからです。その言葉をきっかけに、重要な話を思い出してくれればよいのですが、もじった諺が強く印象に残って、肝心な重要な話は忘れてしまったのでは仕方がありません。その仕方がないことが面談の講習では、よく起こります。
そんな珍妙諺でヒットといえるものとして「オンをオフで返す」があげられます。もちろん「恩を仇で返す」が原題で、恩(おん)を受けた人に対して、感謝をするどころか、逆に仇(あだ)となる仕打ちをすることを指しています。この仇というところをオフに変えて、恩をオンとして、せっかくスイッチをONにしたのに、OFFで返されたらガックリときてしまいます。
相手が、こちらのONを恩と感じて、わざわざOFFで返してきたのだったら、これは本人の意識の問題があり、ONをONと感じずに、余計なことをしたと感じられたら、再度ONにする気もなくなります。暗くなった部屋でパソコンを使って勉強(ではなくて遊びだったりすることもある)をしている人のことを気づかって、明るくしてあげようと電灯をONにしたのに、暗くなってきたので、そろそろ休もうと考えている人には、ONは無理やりしたくないことをさせようとする行為にも感じさせてしまいます。
発達障害児の支援に関わるようになり、親切のつもりで口出し、手出ししたことが本人には困った行為ととられることがあることを知りました。これは別の言葉で表現すると「小さな親切、大きなお世話」となるのでしょうが、そこが理解できていないと“親切”を行っているほうは空回りをするだけ、“大きなお世話”と感じているほうは苦痛なことを続けられているだけ、ということにもなりかねません。少なくとも、自分の考えや主張を押しつけるようなことは、発達障害のある人に対してはやってはいけないことです。発達障害児は10人に1人はいて、その特性は生涯続くということを考えると、話を聞いている人に対しては、発達障害を意識して無理強いをすることがないように、というのが話をする側には常に意識してほしいことです。