コロナ後を考えるために諺(ことわざ)をもじった言葉を示していますが、今回の「人の不利見て我が不利直せ」の原点は「人の振り見て我が振り直せ」で、この場合の振りはよくないところを意味することが多いので、“振り=不利”となると、ほとんど意味が違っていないではないか、と考える人がいるかと思います。確かに、他人の行動を見て、悪いところが目についたら、それと同じことをしていないか、他人から見たら悪いことを自分もしていないかと反省を促すときに使われることが多くなっています。
しかし、「人の振り見て我が振り直せ」の実際の意味は、良いところは見習い、悪いところを改めるということで、まずは良いところに注目して、それを取り入れようとする行動が先にあるべきなのに、悪いことばかりを見て、その批判の気持ちの上に、自分は大丈夫かと振り返るという、なんだか自分勝手な考え方も見えてきます。
また、相手の悪いところや改めるところが目についたら、それを批判の気持ちで見て、自分に置き換えるというのも本来の意味とは少し違うようです。相手を咎める(とがめる)前に、自分に置き換えて、自分の行動として省みる(かえりみる)ことが重要であるということを示す諺であって、いきなり相手の悪いことを対面しているときには口に出さないものの、後で他の人に悪口を言って、「自分はそうならないようにする」ということを言う人もいます。それも違っているのではないかと思うところがあります。
わざわざ“振り”を“不利”と変えたのは、“自分に厳しい人”と“他人に厳しく自分に甘い人”に大別されますが、コロナ禍で経済的にも精神的にも、そして身体の健康面でも厳しい状態に追い込まれていて、これ以上の厳しい状態は嫌だとばかりに、自分に有利になることを最優先させて、他人が不利になることを平気でしてしまう、もしくは意識せずにしてしまう人が増えてきたように感じています。
そんな時期だからこそ、「人の不利見て我が不利直せ」という言葉をもって、コロナ禍で変わってしまった心を、コロナ後にも持ち越さないことを願って、これまで酷い目にあってきたことを紹介して、さらに今何をすべきかということを、あと2回で考察していきます。