血液検査で中性脂肪値、LDLコレステロール値が高いことが確認されると、医師や栄養士による食事の内容の指示や指導が行われます。血液中の脂肪が多いなら、食事の脂肪を減らせばよいのだろうと考えて、脂質制限をする人も少なくありません。しかし、脂肪を減らした割には、なかなか中性脂肪値もLDLコレステロール値も下がりにくいというのは事実です。
頑張った割に報われない結果となるのは、人間の身体に備わっている脂肪を蓄積する仕組みがあるからです。今でこそ好きなものを好きなときに好きなだけ食べられる環境にはなっていますが、人類の長い歴史の中では飢餓状態の時期がほとんどで、できるだけ生命維持に必要なエネルギー源を蓄積しておくための仕組みが出来上がりました。
三大エネルギー源はエネルギー量が異なっていて、糖質とたんぱく質は1gあたり約4kcal、脂質は約9kcalと、2倍以上のエネルギー量があります。体内に蓄積ができるスペースは限られているので、エネルギー効率がよい脂質として脂肪細胞に蓄積されます。そのために、糖質もたんぱく質も脂質も余分となったものは肝臓で脂肪酸に合成されて、蓄積型の中性脂肪となります。その合成された脂肪が肝臓から全身に分布する脂肪細胞に運ばれるときに血液中の中性脂肪が増えることになります。
コレステロールも脂質の一種で、こちらはエネルギー源ではないものの、全身の細胞膜の材料、ホルモンの原料、胆汁の原料として使われています。身体に必要なものであるため、コレステロールも糖質、たんぱく質、脂質から肝臓で合成されています。血液中のコレステロールの80%以上は肝臓で合成されたもので、食事に由来するものは20%ほどでしかありません。
このことから食事で摂る脂質を減らしても、他の栄養素の摂取量が多ければ、中性脂肪値もLDLコレステロール値も下がりにくいということが理解できるかと思います。