コロナ禍で明らかになったのは、価格を下げないと売れない、下げたほうが売れるということが感覚的にわかってきたということです。日本は先進国の中では唯一、実質賃金が上がらず、かえって下がっているということを先に紹介しました。賃金が下がっているから安いものを買う、だから商品やサービスの価格が下がってきて、企業は儲けが出ないために賃金を上げるどころか下げないといけなくなるというデフレスパイラルになっています。それに対して、G7の日本を除いた6か国は賃金が上がり、物価が上がり、企業の収益が上がって賃金が上がるというインフレスパイラルになっています。
日本のデフレスパイラルは経済政策の失敗や、それよりも政治の失敗に国民も指導する側も気づいていないということが指摘されがちですが、国民の頑張りと我慢も大きな要因になっています。頑張れ、我慢しろと言われたら暴動が起こりかねない国とは違って、自分が苦しくても会社や店がつぶれそうになっても我慢をする国民性であることはコロナ禍で明らかにされました。
安いものほど売れるという時代になったように見えても、例えばアルコール類でいうとビールではなく発泡酒や新ジャンル(第三のビール)が売れる一方で、高級なワインやウイスキーなどが売れています。外出自粛、飲食店のアルコール提供の自粛の関係もあるのでアルコールを例にするのは適当ではないという意見があるものの、全体の消費傾向をみると安いものしか売れないと言われても仕方がない状態になっています。
「安物買いの銭失い」は、ただ安いものを買うと損をするということではなくて、値段が安いものは品質が悪いので、買い得だと思っても結局は高くつくということを意味しています。飲食するものなら安い、まずいで済むかもしれませんが、電化製品だと修理や買い替えが必要になるので、かえって高くつくという意味はわかりやすいと思います。
ところが、日本の場合にはデフレスパイラルでも品質は落とさずに頑張ってきました。安くても文句を言うような状況ではないのですが、デフレスパイラルが続く中でのコロナ禍によって、そんな状況ではなくなり、もう頑張りも我慢も続かないというところまで追い込まれています。早くデフレスパイラルを止めないと、「安物でもいい」「高いものを求める消費の意識が変わった」と言っているわけにはいかなくなっているということです。
では、何をすればよいのかということについては、次回に続きます。ただし、大所高所からではなくて、枝葉末節の話にはなります。