ポストコロナ「情けは自分のためならず」3

コロナ禍で厳しい状況になり、感染拡大が抑えられても少しも好転しないという人が多い中にあって、逆にコロナ禍で大きく伸びた業界もあります。人々の商売がうまく進むように手助けして、庶民の潤いがあって潤うという構造のはずの金融機関が、コロナ禍の2年近くが過ぎて振り返ってみたら大きな収益をあげていたという報道をみると、うまくいっている人に対する投資が成功をするという結果であったことを感じます。
金融機関との関係で、よく言われることに、「貸してほしいときに貸してくれなくて、借りなくてよいときに貸しにくる」という格言のような表現があります。困っている人に融資をするのではなくて、困っていない人に融資をするのが今の金融機関の姿勢だと批判されても仕方がないことが起こっています。
今回のテーマの「情けは自分のためならず」は、「情けは人のためならず」をもじったもので、その元となった新渡戸稲造の「施せし情けは人の為ならず、おのがこころの慰めと知れ」が意味するのは「他人に対する恩は忘れても他人から受けた恩を忘れるな」という当たり前のように思えて、実は実践が難しいことでもあります。
コロナ禍に襲われ、次の“禍”(わざわい)を想定したら、厳しい態度を緩めることなどできなくなります。困っている人への融資は、今後も難しいのではないかと思われてしまうところですが、そんなときにこそ「他人から受けた恩を忘れるな」の精神で、利益を次の時代のために還元するような活動をしてほしいのです。
これは金融機関に限ったことではなくて、仕事で勝ち残った人にも言いたいことです。しかし、相手に情けをかけることは自分のためにはならないとばかりに、今回のテーマとして掲げた「情けは自分のためならず」ということだけは、これからも繰り返し襲ってくるであろう“禍”に国民として立ち向かっていくために避けてほしいことであり、その思いもあって、あえて「情けは自分のためならず」という言葉を使って書いてきました。