コロナ後を踏まえて、今からできることを準備しようという主旨で始めたコラムですが、これまで20テーマ、合計で64本を書き続けてきました。前回までの「笑う門には福は内」を受けて、“福は内”と対となる節分の追儺の“鬼は外”を使って、「渡る世間に鬼は外」をテーマに書き進めていきます。追儺というのは、大晦日(おおみそか)に悪鬼を払い、疫癘(えきれい)を除いて新年を迎える宮中の年中行事で、大祓(おおはらえ)に続いて行われます。これが民間の節分に行われる豆まきと混ざり合って、江戸時代から季節を分ける節分(立春・立夏・立秋・立冬の前日)の中でも立春の前日に「鬼は外」と邪気を払う行事が行われていました。
次の節分まで待っていたら、払うどころか、鬼に制圧されてしまいかねない状況です、この場合の鬼は新型コロナウイルスではなくて、感染が拡大したことによって国民が受けている禍(わざわい)のことを言っています。感染症拡大は、変異型ウイルスということで、日本のリーダーが「世界でロックダウンする、外出禁止に罰金かけても、なかなか守ることができなかったじゃないですか」と語気を強めて口にするくらい対抗するのは難しいことかもしれませんが、国民が聞きたいのはコロナ感染ではなくてコロナ禍の対策として何をしてくれるのか、ということです。
新型コロナウイルスの変異種による感染の恐ろしいところは、感染した人が“鬼”になって次々に感染させていくことです。鬼ごっこのように他の子どもに触れれば鬼がバトンタッチされて、鬼だった子どもは鬼ではなくなる、つまり鬼は増えていかないわけです。ところが、新型コロナウイルスは感染させた人から消えてなくなるわけではなくて、バトンタッチのたびに増えていきます。しかもバトンを渡す相手が1人とは限らず複数で、クラスターさえ発生させます。これでは感染者がゾンビ扱いされても仕方がないことで、自分が感染を拡大させていく鬼になってしまい、感染者が差別をされる“鬼は外”となりかねません。
ワクチンを2回接種すれば感染しなくなると言われていたのに、アメリカでは2回接種後に感染するブレイクスルー感染が約7割にもなっている地域があると報告され、日本でも同様のことが起こっていることもあって、国のリーダーがワクチン接種を人流抑制と並ぶ対策と言われても安心できないという声があがるのも、当然の反応です。
今のコロナ禍は、以前よりも厳しい対策が必要ということで、外出自粛による運動不足、家庭での食べ過ぎ・飲み過ぎ、健診・検診の低下、通院の減少など国民の健康度の落ち込みは、さらに進んでいます。これを回復させるには、これまでの健康対策の何倍もの対策が必要で、その方策を考えて準備を始める段階に突入しているのです。