慎重になることは「石橋を叩いて渡る」という諺(ことわざ)を使って表現されますが、慎重になりすぎて叩きすぎて壊したり、叩いて安全を確認しても渡らないということもあります。後者の表現として使っているのが「石橋を叩いても渡らず」です。
コロナ禍の時期に続く新たな生活様式を考えるときに、この「石橋を叩いても渡らず」を引き合いに出して考えることがあります。それは慎重な行動が悪循環を生んで、ポストコロナの時代に日本が経済的に大きな遅れを取るのではないか、日本と他の先進国の間に分断が起こっているのではないか、という懸念があります。
日本の商品価格が安い理由について、テレビ番組で取り上げられてから、商品の価格とデフレスパイラルが話題に多くのぼるようになりました。デフレスパイラルは、物価が継続的に下落し続ける状態のデフレーションと、螺旋を意味するスパイラルを合わせた言葉で、物価の下落と経済の縮小が連動して螺旋階段を下っていくように下降していく深刻な状態を指しています。
日本のビッグマック(マクドナルド)の価格は390円であるのに対して、本家のアメリカは590円、これでも充分に高いかと思ったら、最も高いスイスが760円、スウェーデンが670円、ユーロ圏が540円、ブラジルが420円となっていました。これが上位からの順番なのかと調べてみたら、ノルウェーが635円、カナダが551円、オーストラリアが520円、イギリスが463円、タイが443円、韓国が428円となっていました。
途中の数字を抜いて示すのは、何か意図があってのことで、これだけ見たら日本は安すぎる国ということになるのですが、日本よりも価格が低いのは中国が361円、ベトナムが298円、香港が276円、インドが270円、台湾が268円、マレーシアが257円でした。物価は経済発展の度合いによって異なるもので、世界共通(と言っても実際には国によって違いがある)の商品が比較材料に使われています。
日本のビッグマックが他の先進国と比較して安いのは、日本が経済発展していない証拠のような取り上げ方を番組ではされていました。デフレによって企業収益が悪化すると賃金が削減されて、消費が停滞するために企業収益が上がらず、また賃金が削減されるという悪循環を引き起こします。日本の物価が安いのは日本人の努力によってもたらされたものですが、コロナ禍によって、もう耐えきれないところまで深刻な状況になっているというのが番組が主張するところです。
本当にデフレスパイラルなのかという話については、次回に続きます。