2021年G7サミットは国際会議初参加の日本の代表が存在をアピールする場でした。テレビ報道はオンリピックの開催が支持されたことばかりが大きく取り上げられていましたが、肝心の経済的なところでは浮いているような印象も与えられました。これは共通の言語で話せないことだけが、その理由ではないはずです。
前回のビッグマックの価格が先進国の中では日本が一番安いという話に続いて、テレビ番組では各国の実質賃金の変化を示して、日本だけが1997年から下がっていることが示されていました。1997年の実質賃金を100とした場合に、現在ではアメリカは122.4、フランスは131.6、イギリスは129.9、ドイツは123.5、イタリアは117.4となっていました。これに対して日本は89.1でした。この統計からG7で抜けているのはカナダですが、カナダの物価はアメリカと同様の変化をしているので、かなりよい状況のはずです。
G7の中で日本だけが実質賃金が上がるどころか下がっていて、それが物価に影響を与えています。他の国はインフレスパイラルという形で、企業の業績がよいと賃金が上がり、消費が増えることによって、また企業の業績が上がって賃金も上がるということで、ビッグマックに限らず国際比較で価格が高くても、それを高いと感じないほど賃金が高いということです。
1997年というと橋本政権の時代で、その後は小渕、森、小泉、安倍、福田、麻生、鳩山、菅(かん)、野田、安倍、菅(すが)と続く中で、デフレスパイラルから逃れるタイミングは何回かあったのですが、慎重になりすぎて「石橋を叩いても渡らず」という政策で今まで来てしまったということです。
コロナ禍で経済的に落ち込んでいて、物価は下落しています。賃金が上がらないどころか逆に下がっている状態では日本の実質賃金が回復するのは期待薄です。海外でも経済的に下落が起こっているといっても、それまでの上昇の貯蓄分があるので、日本との差は広がっていきます。こんな状態では、日本の財産ともいえる産業が海外の企業に買い取られてしまうのではないか、という懸念が現実化しているという話は次に続きます。