ポストコロナ「腐った鯛」3

地方創生の仕事をしているときに、今は盛り上がっていないけれど実はキラーコンテンツと認識されている地域の資産として紹介された観光施設、郷土料理などがあります。そのことを一生懸命に説明している地元の人を前にして、頭に浮かんできたのが「腐っても鯛」という諺(ことわざ)をもじった「腐った鯛」という言葉でした。
地方創生の資金は内閣府に申請をして出してもらうという性格のもので、いかにお役人を納得させられる企画を作れるかで、地方に回ってくる金額が変わるということがありました。地方創生の資金は、本来なら全国の自治体に人口比率に応じて配布されるべきものでしょうが、人口が多い地域は産業も盛んで裕福ということで、都市部に回るはずだった金額が地方に回る分に上乗せされるという形で増やされていきました。そのために人口が少なくて、税収も少ない自治体ほど地方創生がしやすいということで、大手の広告代理店や旅行会社が乗り込んでいきました。
その一端の仕事を依頼されたことから、随分と調査をして、企画提案もしてきましたが、そのような仕事が回ってくるのは“健康”が地方創生のキーワードになっていて、運動や食事が具体的な提案事項になっていたからです。地域の資産で稼ぐためには、まずは知ってもらい、実際に来てもらい、体験してリピーターになってもらう必要があるということで、企画優先となっていました。実際に地域の健康づくりに使われていなくても健康づくりに役立つコース、食べ物などがイベントとして提案されていました。
そして、観光客が集まってきたら、地域との交流を深めて移住してもらえるように、健康づくりのイベントを住民と一緒に行い、その先に住民の健康を高めていこうという考えです。地域では高齢者の急増、医療費の拡大、健康寿命の延びの低下があり、これを支える若い世代が地域を離れていくということがあり、地域の健康問題を重視して、先に健康づくりがあって地方創生のイベント企画を進めるということが正しい選択であったはずです。ところが、逆のことが平気で行われてきました。
新型コロナウイルス感染の拡大で、これまで進めてきた地方創生のイベントは全滅状態になり、コロナ禍で住民の健康度が低下しています。東京がコロナ禍で金額的な余裕がなくなっていく中、地方創生の金額も減るのは当然のことです。こんなときだからこそ、住民の健康づくりの成果を全国は難しくても周辺地域に打ち出して、「腐らない鯛」を作り出すタイミングだと考えています。