ポストコロナ「腐ってもタイアップ」2

“海老で鯛を釣る”という言葉は、安い海老で高級な鯛を釣り上げるという諺(ことわざ)で、価値がある鯛だからこそ通じることです。しかし、鯛に見えても鯛でなかったり、鯛に見せかけた違う魚だったら、よい意味にはなってくれません。ましてや、海老が安いシュリンプではなくて伊勢海老(ロブスター)であって、釣り上げて喜んだものが、よく見たら本物の鯛でなかったら、意味が違ってきてしまいます。
“本物の鯛”というのは、マダイ(真鯛)を指しています。鯛と一般に呼ばれている魚は世界には200種類以上もあって、国内で流通しているものでも24種類はあります。スズキ目タイ科マダイ属が鯛であって、他のものはタイ科の他の種類、アマダイ科やキンメダイ科、イトヨリダイ科などの魚です。それでも鯛と呼ぶのは、まさに“腐っても鯛”が意味するところと同じで、価値があるものだと思い込む、もしくは思い込ませているだけです。
50cmを超える大型のマダイは今では赤い色が特徴で、天然物よりも養殖物のほうが多くなっていますが、まさに鯛の中の鯛(本物の鯛)は天然物ということになります。
色さえ違えばマダイと同じというのがクロダイ(黒鯛)で、スズキ目タイ科クロダイ属のチヌと呼ばれることが多い魚です。刺身にしたら皮の色がわからなくなるのでマダイと同じ味わいで食べることができます。充分にマダイと対抗できるのに、見た目をそっくりにしようと料理にするときに着色されることがあります。これこそ勘違いをさせるテクニックが使われた、生であっても“腐ってしまった鯛”と呼ばれても仕方がないものです。
大相撲の優勝力士が手にしている大きな鯛は、マダイで間違いないのですが、おいしいマダイは40cmくらいまでで、20年以上も生き抜いて大きくなったマダイは身が硬く、筋もあって、とても食べるのには向いていません。料理として出されるのは撮影用のマダイではなく、他に仕入れた食べごろのマダイです。
キダイ(黄鯛)はスズキ目タイ科キダイ属、チダイ(血鯛)はスズキ目タイ科チダイ属、へダイ(平鯛)はスズキ目タイ科ヘダイ属とタイ科ですが、鯛と名はつくもののフエダイはフエダイ科、イシダイやイシガキダイはイシダイ科の魚で、形はマダイとは大きく違っています。とはいっても食べておいしいことは認めますが、水族館で見かけるイットウダイ科のエビスダイは色は赤くて鮮やかではあるものの見るだけにしたほうがよいとだけ言っておきます。
実際に、どれだけの違いがあるのかはネット検索でいくらでも画像が出てくるので、それを見て確認してほしいのですが、タイと名乗るのもおこがましいと思える姿形もあり、“あやかりタイ”だけのタイアップでしかないもののほうが多い世界です。