ポストコロナ「膳は急げ」2

日本の伝統的な食事というと、ご飯、魚、野菜や海藻などを中心とし小鉢、汁物といった一汁三菜があげられます。魚だけでなくて、肉も食べるようになり、卵、牛乳・乳製品もたんぱく源として摂るようになりました。食材が洋風化しても、味付けが日本的であれば、これは和食の範疇に入れてもよいはずです。
洋食や中華では味付けが和食とは違っていますが、家庭料理であれば、日本人は和食と同じような食べ方をしています。その基本となるのは、ご飯(米食)です。ご飯があると、おかずを口に入れ、味を濃く感じたときにはご飯を口に入れ、逆に薄く感じたときには汁物(味噌汁など)を口に入れて味を調整しています。この食べ方は“口中調味”といいます。この食べ方をすることによって、一口ずつ味わい、その日の調子に合わせて味を変えていく訓練をしていることから、年齢を重ねていくにつれて味が淡白になっていくという変化が起こります。
このような食べ方をしているのは、世界でも日本だけです。この食べ方をするのは、茶碗を手に持って食べているからで、しかも自分の身体の大きさに合わせた茶碗を使い、食べる量も変えています。箸を使う文化圏は日本、中国、韓国、モンゴル、ベトナム、タイ、シンガポールなどの東アジアに広がっています。同じ箸文化だといっても、他の国ではレンゲもスプーンも使います。伝統料理を箸だけで食べるのは日本だけです。しかも、自分の箸が決まっています。これも手の大きさに合わせてあります。
茶碗と箸は、今は家族のものを一緒に洗い、一緒に片付けていますが、日本の伝統はお膳文化で、自分の食器と箸を自分で洗って、自分のお膳に仕舞うということは僧侶の世界で続けられています。そのようなことを今の時代にすることはないものの、お膳に乗せられる料理の量は個人の身体の大きさによって違ってはいても、お膳に乗るだけのものを食べています。少なくとも大皿から自分の皿に自由に取って食べるというものではありません。だから、食べる量もあらかじめ決められていて、大皿料理のように食べられずに残ったからといって捨てられるということはありません。
お膳文化の内容を思い起こして、コロナ後の時代に早く食事の内容を考えようというのが、「善は急げ」をもじった「膳は急げ」です。