「身から出た錆(さび)」は、自分で悪いことをした結果として自分自身が苦しむことを指した諺(ことわざ)で、自業自得と言い換えることもあります。もともとは刀の錆は放っておくと刀身の価値を失わせてしまうことを指していて、普段から手入れをしておかないと価値を失ってしまうことを意味しています。今回のテーマの「身から出たサービス」は、そのまま読むと自分の気持ちから発してサービスをするという、“おもてなし”にもつながる意味になります。しかし、わざわざ「身から出た錆」のもじりだとわかる言葉を使っているのは、サービスが錆にもなりかねない、サービスをしていることが自分の価値を下げることにもなりかねないという意味で使っています。
コロナ禍でのサービスの変化というと、規制に規制を重ねられて最も影響を受けた飲食店が最も大きくなっています。店舗での料理の提供は、単に食べ物を出しているというだけではなくて、料理以外のサービスも同時に提供されています。ただ食べるだけならテイクアウトでもデリバリーでも同じ料理を味わうことができます。しかし、店での提供は最も適した温度にして、作りたてを提供することで、最もおいしく感じることができます。テーブルに運ぶ人も重要で、そのサービスもおいしさ、楽しさを高めてくれます。
和食は“器で味わう”と言われます。器の形や美しさ、料理によっては口当たり、料理の温度の調整も器の役割です。この料理には、この器と大きくは決められているものの、季節の微妙な変化、季節の先取り、食べる方に合わせた選択も行われます。和食に限らず、食器は料理のおいしさを高めてくれるものですが、テイクアウトとデリバリーでは食器によるサービスは期待できません。
飲食だけでなく、ファッションなどの商品でも、店舗でのサービス(おもてなし)は重要ですが、外出自粛からネット通販が大きく伸びて、実際に店で見て、手に取り、店員から話を聞き、それから選択するということが減りました。店舗と同じ商品をネット通販で、いくつかのサイトの中から最も安いものを選ぶということもあるのでしょうが、ネット通販では多くの商品を目にして、多くの声を参考にして購入することになるので、他の商品を販売するネットに移動されることにもなります。ネットの情報は他人の評価なので、自分で選んでいるようでも実は選ばされているだけということにもなりかねません。
ここで考えたサービスについての思いを、教育の話に移したコロナ後の対応への考察は次回に続きます。