ポストコロナ「転ばぬ先のポール」1

「転ばぬ先の杖」というのは聞いたことがあっても、“ポール”ってなんだと思う人も多いかと思います。ポールではなくて“スティック”と呼ばれることもありますが、これもわかりにくいかもしれません。ポールもスティックも、さまざまなものが検索をすれば出てきますが、転ばないための杖の役割をして、さらに杖なしでも転ばないようにするためにするものはノルディックウォーキングのポールです。
ノルディックウォーキングは、もともとは北欧のクロスカントリースキーの夏場のトレーニングとして始まりました。2本の専用ポールを使って歩くもので、トレーニングが始まりであっただけに、上半身も下半身も勢いよく使うスポーツ感覚のウォーキングです。北欧生まれのノルディックウォーキングが世界に広がり、各国に推進団体ができる中で、日本では独自の方法が生まれました。それはポールウォーキングと呼ばれる高齢者を対象とした歩き方で、本家のノルディックウォーキングが後方にポールを突いてグイグイと前進していくのに対して、ポールウォーキングのほうは前方にポールを突いて安定性を確保しながら歩くものです。ポールが杖だとしたら、日本生まれの方法は、まさに「転ばぬ先のポール」ということができます。
ポールウォーキングにも、いくつかの“流派”がありますが、登場した順番は最初ではなかったものの、全日本ノルディック・ウォーク連盟が活動範囲も全国規模で、指導者養成も盛んで、参加者も最も多くなっています。全日本ノルディック・ウォーク連盟では20の都道府県に地域組織があり(例:岡山県ノルディック・ウォーク連盟)、地域組織がない地域では近隣の連盟が普及・指導する体制が整えられています。
ここまで拡がったのは、創設者が日本ウオーキング協会の元会長の東京大学名誉教授(教育学博士)で、超高齢社会に相応しいウォーキングを求めて、手探りで改良を重ねて日本独自のポールを開発してきました。複数のポールメーカーは、元はスキーのストックの会社でしたが、スキーブームが去った後に、ポールウォーキングのメーカーとして生き残ったという経緯があります。
ノルディック・ウォークが、本家のノルディックウォーキングではなく、日本発のポールウォーキングということで、ややこしい感じがしますが、全日本ノルディック・ウォーク連盟では前突きをアグレッシブスタイル、前突きをディフェンシブスタイルに分けて、どのような人にも対応できる歩き方を追求していることから、流派にこだわらないノルディック・ウォークとなっています。