ポールを使ったウォーキングや体操というと、どうしても高齢者のためのものという印象が抱かれがちですが、歩くことは子どもから高齢者までに共通して大切なことです。超高齢社会を快適に過ごし、高齢者とともに生活をする、ケアをするという立場の人にとって、いつまでも動ける身体でいることは重要なことです。
若い人の歩き方を見ていると、正しい歩き方とされる腕を大きく振って、歩幅を広げ、かかとから着地して、足先に体重を移動させながら足先で地面を蹴るようにして足を踏み出すという基本的な動作ができていない場合を多く目にします。少し前傾姿勢になっていることによって前進するためのエネルギーを効率よく使うことができます。少しの前傾姿勢ならよいのですが、首が前に出るようになり、目線が下がって、まるで高齢者のような歩き方をする子どももいます。
また、腕を前後に大きく振るのではなく、左右に振っている子どもも多く目にします。胸を張った姿勢で、勢いよく前進するためには腕を後方に引くように振らないと、反対側の足を大きく踏み出すことができません。前かがみになって首が前に出ると、肩も前に出ることから腕を左右に振って歩くことができるようになります。
正しい歩行姿勢を保つトレーニングとして役立つのが2本のポールを使って歩くノルディック・ウォークです。また、背筋が伸びて、少し胸を張る感じになって腕の力も使って前進するための活動エネルギーを効率よく引き出すことができます。これは年齢に関係なく、子どもであっても高齢者であっても同じように身につけたい歩行の技能です。子どもの中には発達性協調運動障害が10%ほどもみられます。上手に歩くことができず、転倒しやすく、しかも転ぶときには顔から地面に突っ込むようなことになります。こういった転倒予防もポールを使った歩行で身につけることができます。
そのような手法を使わなくても正しく歩いて、健康度が高められればよいのですが、新型コロナウイルス感染拡大によって外出自粛、運動の機会の減少もあって、そもそも1日の歩数が大きく減少しています。健康の基本中の基本であるウォーキングすらできなくなったコロナ禍は、国民的に健康度を大きく低下させてしまっています。コロナ後には一気に健康度をV字回復させていかなければならないことは明らかで、そのためには歩行能力が低下してしまった人でも安心して実施できる、そして健康効果が高いノルディック・ウォークを地域の健康づくりに取り入れることを提案しています。