「果報は寝て待て」というのは、ただ寝そべって待っていればラッキーが飛び込んでくるというような意味ではないことは以前に、このコロナ後を考えるコーナーで紹介しました。運というのは自分の力ではどうにもならないものだから、あせらずに時期を待つのがよいという意味ですが、待っている間にもやるべきことがあります。その重要性を伝えたいのですが、それと似たような意味合いの諺(ことわざ)に「逃げるが勝ち」があります。
争いを起こさずに逃げるほうがよい、という意味で使っている人がいて、「果報は寝て待て」よりも、もっと怠け心を出しているようなイメージさえあります。しかし、「逃げるが勝ち」は、形勢が不利になったら無駄な抵抗をするよりも逃げるに限るという意味で使われていて、さらに逃げて相手に勝ちを譲るほうが大局的には勝つことができるという意味を含んでいます。
この場合の“逃げる”というのは負けて逃げ出すのではなくて、負けないように逃げるのであって、退却をしたように見えたとしても、実際には弓を引き絞って力をためて、一気に撃ち放つための準備としての行動です。つまり、逃げるように見えることでも意味があり、価値があるということから「逃げるが価値」をテーマとしています。
コロナ禍で、これまでの実績を捨てて撤退する(逃げる)人が続きました。撤退して他の商売に移る人がいる一方で、これを他のことを始めるよい機会とした人もいました。これは元のところに残って頑張っている人には逃げたように見えたとしても、本人は無理をして余計な力を使うのではなく、力を溜める機会にして、次のチャンスに力を注ごうとする、まさに「逃げるが価値」を体現している人も少なくありません。
ピンチをチャンスに変える、という安易な意味ではなくて、方向性や生き方を変えるチャンスとしているのです。本当に言いたい意味合いは、次回に続きます。