鬼を新型コロナウイルス感染症に例えた話を前回しましたが、コロナ禍で被害を受けている人に、追い討ちをかけるように経済的に立ち行かなくなるようなことをした人は、まさに「鬼の片棒」を担いだと非難されても仕方がないことです。
機能性がある食品を輸入して販売している会社が、国内シェアのトップとなり、販売価格の決定権も握って、営業社員を増やしてデパートなどで試食を繰り返して販売量を大きく伸ばし続けていました。配送センターも独自に立ち上げ、そこでも社員を増やして対応してきました。ところが、経営者が輸出元との関係がうまくいかなくなり、契約を打ち切られるだけでなく、輸出元が別の会社と販売契約を結びました。
そこで輸出先の国に製造・輸出会社を立ち上げ、同じ商品を輸入できるようにしました。これは国内で販売しているデパートなどが、これまでの付き合いから、その会社の商品の販売を継続してくれるとの期待があったからです。しかし、デパートなども消費者も信頼を寄せているのは、これまでのブランドであって、同じような原材料であっても、別の商品に切り替えることを望むのは厳しいことです。実際に、そのとおりの結果となり、デパートは別の会社から以前のブランドを購入して販売することとなりました。
ここで一気に回復するように動こうというタイミングで、新型コロナウイルス感染症の拡大が起こり、試食販売ができなくなりました。その食品は機能性が高くて、価格が非常に高く、味も独特であることから試食なしでは売りにくいものです。これまでは機能性の高さからメディアも記事や番組で取り上げてくれていたのですが、コロナ報道が盛んに行われた結果、メディアで見聞きする機会も減りました。また、食品のよさを海外旅行で経験して、それで国内で購入するということも海外に行けない時期が長く続いたことで、それも期待できなくなりました。
コロナ感染が大きなダメージを与えたといっても、もとは経営者の判断のせいであって、これまでは社員を大事にする会社というコンセプトで首切りはしてこなかったのですが、すべて新型コロナウイルス感染症という“鬼”のせいにして整理を始めました。これこそ「鬼の片棒」を担いだ所業で、このような例は、いたるところで見聞きしました。
すべてを鬼のせいにされたら、鬼が可哀想になるような結果です。