ポールがないときに足の力で歩くには

前回の「ポールなしで歩けるようにするのが目的」という話に、すぐに反応して質問を寄せた編集者がいます。ポールウォーキングではなく、ノルディックウォーキングの場合にポールなしで正しい姿勢で歩行する方法を聞いてきました。その編集者とは以前に、ノルディックウォーキングの姿勢はモデルのように背筋をまっすぐに伸ばして歩く姿勢が正しいのか、それとも通常の歩行の正しい姿勢に合わせた歩き方をするのがよいのか、ということで論議をしたことがあり、結論を出そうという思いから連絡をしてきたようです。
ノルディックウォーキングのポールを使って歩くと、背筋が伸びて、胸を張り、歩幅が広がって、踵から着地して、足の筋肉の前側(大腿四頭筋)と後ろ側(大腿二頭筋)を同時に使って勢いよく前進できるようになります。モデルのように、という表現が正しいかどうかは論議の対象になるところですが、頭から上半身、腰、足先まで一直線になるような姿勢で歩くのは、これまで我流で歩いていた人にとっては筋肉に負担がかかることになります。
ポールなどで歩くと、上から下まで一直線になる姿勢は、どうしても保ちにくくなります。その前に前屈みの姿勢になっていきます。前屈みになると、顎(頭)が前に出て、視線が下向きになり、背中が曲がった歩き方になっていきます。そうならないようにするには、ポールを使って歩くときから、少し前屈みになって、その姿勢が保てるように筋肉がつき、スムーズに歩けるように指導をしています。
ノルディックウォーキングとポールウォーキングの各団体の指導者とも、このことを議論したことがあるのですが、それぞれのノルディックウォーキングとポールウォーキングの団体は、これが正しい姿勢、正しい歩き方という定義のようなものがあります。定義があることによって普及しやすいのは当然のことです。それが各団体が流派のように感じて、同じポールを使った歩き方なのに、教わるほうを混乱させているというメディア関係者もいます。
私たちは、どうなのかというと、複数の団体の指導者と付き合ってきて、またメディア関係者とも付き合ってきて、この方法でなければならないという考えはやめました。私たちはポールを使ったウォーキングを普及しようという手段と目的が一致したことをやっているのではなくて、ポールは手段としました。目的は、あくまでポールなしでもスムーズに歩けるようにすることです。
そこで私たちが実践しているのは、歩き出しの動きを身につけることです。まっすぐに立っている姿勢から片足を前に出すのが一歩目というイメージではなく、一歩目は身体を徐々に前傾させていって、前に倒れそうになったときに片足を前に出して支えるというイメージの身体の使い方です。そして、反対側の足を出し、それを続けて前進していきます。その方法だと、少し前傾姿勢になり、この前傾の勢いが腕の力をポールに伝え、それを足の力を補助にするのと同じような効果を生むことができるようになります。
この歩き方は、やってみれば簡単なことで続けられることなのですが、初めのときだけはコツが必要です。このコツだけは実際に教える場があって、それぞれの人の歩き方に合わせて修正していかなければならないので、体験会や教室が必要になります。だから、私たちが実施する教室なりに来てほしいということでは広まらないので、健康を重視したウォーキングの理論と実践を指導できる資格認定者を育成しているところです。