ポールなしでも歩けるウォーキング

正しい歩行姿勢とされる、背筋を伸ばして、胸を張り、腕を大きく振って、歩幅を広げて踵から着くようにして、勢いよく前進するというのは、文字にすると簡単なようでも、実際に正しい歩き方をするとなると、腰が曲がった姿勢になったり、前屈みになりすぎたり、逆にモデルのような歩き方になったりと、歩く姿はバラバラです。それを矯正して、みんなで同じ姿勢で歩くことは面倒、無理だということで、よほど妙な歩き方でなければ注意をしないという例もあります。何の例かというと、ウォーキング教室やウォーキングイベントでも、そういったことを見受けます。
正しい歩き方を見につける方法として、私たちが採用しているのはノルディックスタイルのウォーキングです。ノルディックスタイルのウォーキングは、2本のポールを両手に持って、ポールを地面に突きながら歩くもので、北欧で誕生したノルディックウォーキングは体側から後方にポールを突いて勢いよく前進していくもので、若い人向けとされています。されていますというのは、65歳以上の高齢者でも体力がある人なら若者と同じように歩くことができるからです。ポールがあると上半身を支えて足腰にかかる負担を減らして、さらにポールの力も使って前進力を高めて歩くことができるので、年齢を感じさせない歩き方ができるのです。
もう一つのポールを使ったノルディックスタイルのウォーキングはポールウォーキングです。これはノルディックウォーキングから派生した日本生まれのウォーキングです。ポールは前方か体側に突いて、身体を支えるのでディフェンシブのウォーキングとも呼ばれます。対象者は高齢者や体力が低下している人であるので、一般に言われている“一般の歩行よりも20%ほどエネルギー消費が高い”というのはノルディックウォーキングのほうで、ポールウォーキングは、ここまでは高まらないとされています。しかし、ポールがあることによって普通の歩行速度で歩けるようになり、長く歩けるようになるので、全体としてのエネルギー消費が高まることになります。
ノルディックウォーキングを続けていると、ポールを使わないときにも歩幅が広がり、胸を張って、勢いよく歩けるようになります。では、ポールウォーキングのほうはというと、それぞれの人の体力の状態によって違ってきますが、体力がある人の場合にはノルディックウォーキングと同様の結果が得られるようになります。体力がない人の場合だとポールの支えがなくなることで以前と同じような歩き方になってしまう人もいますが、正しい歩行姿勢によってポールウォーキングを続けていることで、筋力も体力もついていくことによって、だんだんとポールなしでも正しい歩行姿勢で歩けるようになっていきます。
私たちがポールウォーキングの体験会、講習会を実施するときには、最終的にはポールなしでも正しい姿勢で歩行できるようになることを目指していると話しています。ポールを使って目的地まで歩き、休憩した後にポールを忘れて、そのまま歩き出した……ということが起こることを期待して一緒に歩き、指導をさせてもらっています。