テレビ番組を担当しているディレクターのうち、私たちに質問をしてくる方の多くはテレビ局そのものの社員ではなく、下請けなり契約で番組を制作している会社に所属しています。中にはテレビ局の子会社の制作会社ということもありますが、全国キー局の番組を担当しているのに、なぜ私たちのような団体に質問をしてくるのか疑問を感じたことがあります。その質問の内容も、すでに知っているだろうということ、他でも調べられるようなことが多くなっています。
その一つの理由として考えられるのは、番組の中でコメントを述べてくれる専門家の紹介です。これまで付き合ってきた使いやすい専門家では、いつも同じような顔ぶれなので飽きられることもあります。これは急遽の出演のとき、つまりニュース番組のコーナーのコメントなどでは医薬博士や専門医の肩書きがあっても、言葉が適切かわかりませんが“そのへんのクリニックの先生”で間に合わされることもあって、視聴者の信用性が得られるか不安を感じることもあります。
なぜ、そのへんの先生とわかるのかというと、私たちは大学などの研究機関の発表を常に検索していて、これは「健康情報メール」として毎週発信していますが、医科学の学会にも参加して各学会の共通認識となる発表を見聞きしているからです。そのおかげで、テレビ番組や雑誌記事でトピックスのように取り上げられることが、それほど大騒ぎするような話ではない、ということにも気づいています。これまで学会で発表も発言もしたことがない先生が、共通認識と少しズレた話をしていることもあるので、そのへんのことはディレクターやプロデューサー、その他のメディア関係者にも話すようにしています。
もう一つ理由として考えられるのは、というよりもメディア関係者から何度か言われたことがありましたが、私たちの“切り口”です。本当は“鋭い切り口”と書きたかったこともありますが、同じネタであっても、なるほどと共感が得られる切り口、そんな考え方もあるのかと感じられる切り口を提供しているからです。ディレクターも記者も厳しくて、企画会議のときに採用されるネタを出さないと仕事がもらえないことも多くなっています。テレビのディレクターはネタ探しを、雑誌など目を皿のようにして隈なく見ていっています。その雑誌を書く記者は、新聞を隈なく見てネタ探しをしています。
新聞のネタは役所や公益団体、研究機関などからの発表データが使われているので、私たちの「健康情報メール」は、そのネタそのものとなっています。「探す手間が省けて便利」などと言われると情報発信をしていてよいのかと考えることがないでもないのですが。
同じような研究を行っているはずなのに、研究機関や研究者によって異なった方向や違った方向の結果となることもあります。「健康情報メール」は平成22年の4月から発信しているので、7年半ほどにもなります。これだけ見続けて、その中から選択していると、いろいろなことに気がつきます。中には民意を誘導しているのでは、と感じるようなものを見つけることもあります。
こういった活動をしているので、他とは異なる見方をするようなことになり、これは違った目線で捉えて報道するメディアと共通しているようです。このようなことを書くと、またメディアからの問い合わせが増えるのは承知していますが、これも私たちの役割の一つなので、覚悟をして待つようにしています。