遺伝情報を子孫に伝える遺伝子の中で、肥満に関連する遺伝子は40種類以上が発見されています。肥満遺伝子の多くはエネルギー代謝に関わるものであり、その中で日本人に多いものとして3種類の遺伝子(β3アドレナリン受容体遺伝子、脱共役たんぱく質1遺伝子タイプ、脱共役たんぱく質1遺伝子タイプ)の研究が進められています。
遺伝子のタイプは変えることができず、一生涯続くものではあるものの、太りやすい遺伝子であれば必ず太るというわけではありません。例えば、中性脂肪を蓄積しやすい遺伝子の人が、脂肪が少ない食事をしているか、脂肪を代謝させやすい生活をしていれば、太らないのは当然のことです。
日本人は、低栄養の時代が長く続いたため、エネルギー源となる栄養成分の吸収性を高める作用とともに、吸収したエネルギー源を多く蓄積させ、さらに消費を抑える仕組みが備えられています。体脂肪の蓄積が多くなると、食欲を抑え、エネルギー消費を進める働きがあるホルモンのレプチンが多く分泌されるようになります。
レプチンが正常に分泌され、適切に働いていれば脂肪細胞に中性脂肪が蓄積されすぎることは起こらないわけですが、レプチンが分泌されても、それに反応するレプチン受容体が働きにくく、食欲が抑えられなくなることがあります。
その抑制をしているのは肥満遺伝子もしくは倹約遺伝子と呼ばれるβ3アドレナリン受容体遺伝子です。β3アドレナリン受容体遺伝子は、運動などによって脳から興奮ホルモンであるアドレナリンが分泌されても、中性脂肪を分解しにくくさせる作用があるため、内臓脂肪が蓄積されやすく、運動してもやせにくくなっています。
β3アドレナリン受容体遺伝子タイプの人はリンゴ型肥満とも呼ばれ、中性脂肪の分解が進みにくいことに加えて、インスリンの分泌が低く、血糖値が上昇しやすい特徴もあります。ブドウ糖が多く含まれる食品を食べると、ブドウ糖が肝臓で脂肪酸に合成されやすく、中性脂肪に合成されたあと内臓脂肪として蓄積されやすくなっています。日本人の約30%が該当していて、1日の基礎代謝量は200kcalほど低くなっています。
脱共役たんぱく質1遺伝子タイプは洋ナシ型肥満と呼ばれるもので、脂肪の代謝が低いために余分な脂肪が内臓脂肪として蓄積されやすく、下半身に皮下脂肪が蓄積されやすいのが特徴です。日本人の約35%が該当して、1日の基礎代謝量は100kcalほど低くなっています。
β2アドレナリン受容体遺伝子タイプはバナナ型肥満と呼ばれるもので、エネルギー代謝が低いために、太った後にはやせにくい特徴があります。若いときにはやせていたけれど、現在は太っている人に多くみられます。日本人の約20%が該当し、1日の基礎代謝量は200kcalほど高くなっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕