三世代というと親、子、孫を一般には指していますが、これは親の側からの目線であって、三世代目からの目線では自分、親、祖父母となります。日本人の平均寿命(令和元年)は男性が81.41歳、女性が87.45歳ですが、平均寿命が50歳を超えたのは昭和22年のことで、60歳を超えたのは昭和30年でした。そのときから比べると1世代分も長生きできるようになったので、それだけ次世代に伝えることができる期間が長くなりました。
100歳を超えて現役医師(聖路加国際病院)であった日野原重明さんは、新老人の会を設立して、シニア世代が参加した健康情報を研究に役立てるためにスポーツを推奨していました。その一つがスローピッチソフトボールです。これはソフトボールの正式な競技の一つで、一般に国際競技でも知られているのはファストピッチソフトボールです。投手が早く投球するのではなくて、スローピッチソフトボールはゆっくりと、しかも山なりに投球します。その範囲は1.5m以上、3m以下を通過する放物線を描いた軌道と定められています。
他にもファストピッチソフトボールとは異なるルールは多数定められているのですが、高齢者でも安心してできる生涯スポーツとして1塁ベースは2つ、ホームベースも2つあります。打者・走者と守備が交錯しやすい1塁は2つ並んで設置されていて、守備側はラインの内側にあるベースを踏み、走者はラインの外側になるベースを踏みます。また、ホームベースは守備側が通常の位置にありますが、走者が踏むのは外側に離れたところにあり、そこまで3塁から別に外側にラインが引かれています。これでホームベース上での交錯も避けることができます。
全日本健康スローピッチソフトボール連盟によって大会が開催されていて、全国大会は日野原カップと名付けられています。
スローピッチソフトボールに限らず、生涯スポーツは高齢者や、それこそ障害者だけでなく、子どもも含めた全世代で楽しむことができるスポーツです。生涯スポーツの中には、従来のスポーツのように組織化され、ルールも絶対に変更しないという考えのところがある一方で、参加者に合わせてルール変更も認めているところもあります。ルールに従いにくいところがある発達障害の人が選手として参加するだけでなく、運営にも関われるようにしてくれている生涯スポーツとの連携が、今後の三世代の交流には必要だと考えています。