三大ヒトケミカルの医薬品としての機能

三大ヒトケミカルは、もともと医薬品であったものが食品にも許可されたことからサプリメント成分として使われるようになったという話を何度もしています。どんな医薬品として使われているのかについても紹介してきましたが、医薬品の副作用とサプリメント(三大ヒトケミカル)の活用について触れたところ、またもやテレビのディレクターから三大ヒトケミカルの医薬品としての働きについての問い合わせがありました。ディレクターには過去の該当するところを貼り付けて、クリックしたらわかるようにしてメールを送りましたが、ついでなので、ここでは追加情報も加えて書き進めることにします。このページをディレクターが気づいたら面白いのですが。
α‐リポ酸はチオクト酸と呼ばれる物質で、その酸化体のβ‐リポ酸と区別するためにα‐リポ酸と呼ばれています。医薬品としてのα‐リポ酸は、チオクト酸(注射用)として利用されています。適用は「チオクト酸の需要が増大した際の補給(激しい肉体疲労時)」、「亜急性壊死性脳脊髄炎」、「中毒性(抗生物質のストレプトマイシン、カナマイシンによる)および騒音性(職業性)の内耳性難聴」となっています。
α‐リポ酸は天然型と非天然型があり、医薬品は天然型のR体です。だから、サプリメント素材として使われるのもR体でなければならないはずですが、多くのα‐リポ酸を使ったサプリメントはR体と非天然型のS体を等量(50%対50%の割合)で使っています。体内で活用されるのは天然型のR‐αリポ酸だけです。
L‐カルニチンは2種類のアミノ酸(リジン、メチオニン)から肝臓、腎臓で生合成される誘導体で、胃液、腸液、唾液、胆汁の分泌および腸管運動の亢進がみられる消化機能亢進剤として用いられています。先天的代謝異常症(プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症など)によるカルニチン欠乏症に用いられます。中心静脈栄養や血液透析、バルプロ酸の長期服用によってもカルニチン欠乏症が起こります。脂質代謝に用いられるのはL‐カルニチンのみであり、対掌性(物質の構造は同じだが左右逆の形になっている)のD‐カルニチンには活性がありません。
コエンザイムQ10は体内に存在するミトコンドリアの電子伝達系の補酵素で、体内では肝臓でメバロン酸から生合成されます。酸化型のコエンザイムQ10はユビキノン、還元型のコエンザイムQ10はユビキノールと呼ばれます。ユビキノンは狭心症、心不全、虚血性心疾患の症状改善に対して薬理作用が認められ、エネルギー代謝改善循環器用薬として用いられています。また、軽度から中等度の鬱血性心不全症の治療薬、高血圧症、歯周病、制癌剤や向精神薬の副作用予防効果、そして皮膚外用剤としての老化防止効果等も知られています。
スタチン(脂質異常症治療薬)はHMG‐CoA還元酵素を阻害することで体内でのコレステロール合成量を減少させますが、共通系でコエンザイムQ10が合成されているため、スタチンの服用によって体内でのコエンザイムQ10の合成量が減少することが知られています。
医薬品としての効能効果が、そのままサプリメントとしての三大ヒトケミカルの機能性ではありません。三大ヒトケミカルのサプリメントは、それぞれが独立して使われるよりも、組み合わせての使用でエネルギー代謝の機能を高めることができます。R‐αリポ酸は細胞のミトコンドリアにブドウ糖を取り込み、L‐カルニチンは脂肪酸を取り込み、コエンザイムQ10はミトコンドリア内のTCA回路でのエネルギー産生の補酵素として働き、セットで揃っていることで代謝をフルに働かせることができるのです。